甲子園に球児たちが帰ってくる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止された今春センバツの出場32校を招く「2020年甲子園高校野球交流試合」が10日、いよいよ開幕する。日刊スポーツはテレビ朝日系「熱闘甲子園」(今年は休止)で16年からキャスターを務めてきたヒロド歩美アナウンサー(28=ABCテレビ)にインタビュー。特別な夏を迎えた球児たちにしたためた「手紙」に込めた思いを明かし、愛情いっぱいのエールを送った。【取材・構成=石橋隆雄】

いよいよ「2020年甲子園高校野球交流試合」が始まる。

ヒロドアナウンサー(以下ヒロド) この夏の先陣を切る大分商と花咲徳栄(埼玉)の開幕試合に注目ですね。最初に2020年の甲子園の土を踏む。開会式もこの2校でやる。注目ですね。例年なら故郷の思いを背負ってという方もいますが、彼らから『全国の球児の思いも背負っている』ということも聞いたので。

センバツ出場予定校の救済策として実現する交流試合。毎年球児たちを取材してきたヒロドアナも特別な思いを抱く。コロナ禍の影響で自宅待機が増え、その時間を使って取り組んだことがあった。

ヒロド 生放送以外は、バラエティーもなくなったので…。その時間はいろいろ学校を調べて、手紙を書いていました。

甲子園に出場する強豪校だけでなく、ネットで目にした閉校が決まっている高校などの野球部にも、直筆で思いをしたため続けた。

ヒロド センバツが中止になって、(出場予定だった)32校に、ちょっとお手紙を書いてみようと思ったところからなんですが、喜んでくださって『直筆の手紙、ありがとうございます』というのを見た時に、これってもしかして気持ちが伝わっているのかなと思って。手書きなので、相当な労力ですが、今、400校くらいに書いたんです。

休校で部活動は停止。学校での取材ができない中、おうち時間を使って、各校への思いを便箋に乗せた。

ヒロド ひたすらやっていました。もう2カ月くらいですが、まだまだです。

球児から直筆の返事や監督からお礼が届くこともある。

ヒロド 私、人の直筆が好きなんです。何よりも思いが伝わると思って。球児によっては葛藤が見える文字がありますし、周りへの感謝を表現する球児もいる。手紙を書いたのは今年が初めてですが、例年よりも手紙を通してリアルな感情を取材できていると思います。ある監督さんから『ずっと沈んでいた顔が明るくなった』という言葉もいただきました。

5月20日、今夏の全国高校野球選手権大会の中止が決まった。

ヒロド 身近に取材してきた球児たちの顔がブァーッと全部出てきて。ただテレビ(のニュース)を見ていました…。でも、ある高校の監督が、中止から24時間もたっていないのに、『3年生が下級生に“お前たちに伝えるものを練習を通してやっていく”と伝えていた、もう大人には理解できない表情で』と(話していた)。その時にあらためて『コロナに負けるな』という言葉は球児にはいらないなと、すごく思いました。もちろん全国の全員がとは言えませんが…。

今夏は16年からキャスターを務めてきた「熱闘甲子園」も休止となる。

ヒロド (休止になって)『球児を伝える人』っていう思いを自分の中で確認できました。私にとって彼らはヒーローなので。

球児への取材時に必ずといっていいほど質問してきた「あなたにとって甲子園とは」を本人に聞いてみた。

ヒロド 高校野球に携わっている限りは、答えがない。今はそれを見つけているところです。

○…ヒロドアナはボールに「#2020僕らの証」と書いた。自身のインスタグラムで取材した様子などに、このハッシュタグをつけて投稿している。「今年、僕たちがいたという証(あかし)がほしいという声を聞いたので、このタグをつけた投稿が広がればいいなと始めました。野球部だけでなく、吹奏楽部の高校3年生からも投稿がありました」。高校3年生たちの思いを少しでも形に残すきっかけになれば、うれしい。

◆ヒロド歩美(ひろど・あゆみ)兵庫・宝塚市出身。日系オーストラリア3世の父と日本人の母との間に生まれ、国籍はオーストラリア。早大国際教養部卒。14年朝日放送入社。「速報甲子園への道」「熱闘甲子園」をはじめ「芸能人格付けチェック」「朝だ生です旅サラダ」などマルチに活躍中