昨秋東北王者の仙台育英(宮城)が、プロ注目投手陣を擁するノースアジア大明桜(秋田)にタイブレークの末に2-1でサヨナラ勝ちし、決勝進出を決めた。

延長10回裏1死一、二塁、宮本拓実外野手(3年)が左越え適時二塁打で熱戦にピリオドを打った。12日の決勝(午後2時半開始)で聖光学院(福島)と対戦する。決勝は宮城・石巻市民球場で行われる。

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35度を超える真夏日の中、仙台育英の宮本が熱戦に決着をつけた。1-1で迎えたタイブレーク10回裏1死一、二塁。外角から入ってきた変化球を逆方向に強振。左翼手の頭を越えてフェンスまで転がるの確認し、二塁をまわって右拳を突き上げた。「公式戦のサヨナラ打は野球人生で初めて。自分が決めるしかないと思って打席に立った。狙い通りの球でした」。ファウルで粘りながら配球をよんだ会心の一撃だった。

相手のドラフト候補右腕・長尾光投手(3年)は仙台・袋原小の同級生だ。野球チームは別々だったが、正月には一緒に食事に行き、甲子園での対戦を誓いあった仲。高校初対戦の昨秋東北大会2回戦では投ゴロ併殺だっただけにリベンジも達成。サヨナラ打後に駆け寄ると、「最後にお前にやられるとは思わなかった」の長尾の声に「ありがとう」と真剣勝負を感謝。友のプロ入りも願った。

自身も小6で楽天ジュニアに選出され、秀光中時代は世代別日本代表として活躍した好投手だった。中3時に右肘を痛め、トミージョン手術で回復に努めて仙台育英でエースの座を狙ったが、痛みを感じる時もあり打者に転向。昨夏の甲子園でも主力打者に成長し、投手への気持ちは封印した。全国の好投手との対戦で、低めの変化球攻略が課題に。今冬はフリー打撃などで低めを意識し、紅白戦で成長度を確認。大事な場面での一打で結実させた。

今春センバツ、夏の甲子園での活躍次第ではプロに挑戦する可能性もあったが、大学進学でさらなる成長を期す意向だ。高校野球生活は聖光学院との決勝と、倉敷商(岡山)と対戦する15日の甲子園交流試合の2試合のみ。「強い選手だったり、控え選手のサポートがあるから自分たちが活躍できる。仲間のために、まずは東北で優勝したい」。一番長い夏を得られなかった友や仲間のために、公式戦全勝で恩返しする。【鎌田直秀】