星槎国際湘南・土屋恵三郎監督(66)は「良かったよ。峯尾に『頼むよ』と言われてたから」と、うれしそうに汗をぬぐった。「峯尾」とは、桐蔭学園でともにプレーした峯尾晃氏のこと。49年前の夏、一緒に全国制覇を成し遂げた戦友は綾瀬の監督だが、その綾瀬は横浜隼人に3回戦で敗れた。望んでいた旧友対決はならなかった。しかも、峯尾監督は今夏で勇退。土屋監督は前日に電話で激励を受けていた。

友の分まで-。初回から、土屋采配がうなりを上げた。1死から四死球と中前打で塁を埋め、5番佐野忍虎一塁手(2年)の打席。カウント2-0から、スクイズの構えを見せた。三塁走者も一瞬、走るそぶりを見せる。3ボールとなり、次の球でもスクイズの構え。結局、フルカウントから中前に先制打が飛び出した。さらに2点を加え、いきなり3点を先取した。

4回に追い付かれたが、5回以降に計4得点で突き放す。6回も走者が三塁に進むと、たびたびスクイズの構えで揺さぶり、3点を追加。この試合、走者三塁で打者がスクイズの構えを見せたのは、計5回もあった。

3回戦の湘南工大付戦では2ランスクイズを決めたが、この日は実際にスクイズをすることはなかった。そこに、土屋監督の狙いがある。「この暑さ。バッテリーは頭がパニックになりがち。早めにバットを寝かせることで、慌てさせる」と意図を明かした。初回に2度、スクイズの構えを見せた後に先制打を放った佐野は「揺さぶりが効いたと思います」と、してやったりの顔で言った。

計14安打を重ねたが、いずれも単打だった。奪った四死球は4つ。コツコツと当て、追い込まれてもファウルでしのぎ、四球を選ぶ。だから、長打はなくても横浜隼人の好投手を相手に7点を奪えた。土屋監督は「140キロ台中盤のボール。勢いを利用しろと言った。レベルスイングで、後ろにつなげていく攻撃が出来たね」と満足そうだった。

過去2試合は5回コールド勝ち。この日は、がっぷり四つから老練なタクトで押し切り勝ち。16強に進んだ。「まだまだ3年生にゴールは切らせたくない。もっと上を目指します」。甲子園春夏計10度出場の手腕で、虎視眈々(たんたん)と先を伺う。【古川真弥】