センバツ21世紀枠の磐城(福島)が、昨秋の東京王者・国士舘と堂々と渡り合った。

試合前には、センバツ中止決定後に県高野連医務局入りのため福島商に異動となった木村保前監督(50)が、特例でシートノックを行い選手を鼓舞。エース沖政宗投手(3年)が肘の不調で万全ではない中、再三の好守でもり立てた。

県内屈指の進学校で文武両道を貫いてきた選手たちは、夢の舞台で全力プレーを披露した。

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伝統のコバルトブルーの戦士たちが、聖地で躍動した。センバツ21世紀枠の磐城(福島)が、昨秋の東京王者・国士舘と堂々と渡り合った。肘の不調で全力投球ができないエース沖政宗投手(3年)を、バック全員で助けた。

1回1死三塁で三ゴロから併殺に。3回には難しい飛球を市毛雄大遊撃手(3年)が好捕。7回1死では小川泰生一塁手(3年)が、邪飛を追いカメラマン席にダイブ。同1死二塁では、安打で本塁をついた走者を樋口将平右翼手(3年)が本塁補殺の好返球。8回には清水真岳左翼手(3年)がダイビングキャッチ。捕手の岩間涼星主将(3年)は、2度二盗を刺した。

魂のノックでスイッチが入った。センバツ中止決定後に県高野連事務局入りのため福島商に異動となった木村保前監督(50)が、特例で試合前のシートノックを行った。7分間で71球。「人生でこれほど特別で濃密な7分間は初めて。時が止まっているような感じだった。最高の舞台で、最高の準備ができるようにと思ってやらせていただいた」。市毛は「みんな緊張していたけど、ノックのおかげで足が動くようになった」、岩間主将は「魂のこもったノックを1球1球打ってもらい気持ちが上がった。ファインプレーは木村先生の魂があったおかげ」と感謝した。

木村前監督からバトンを引き継いだ渡辺純監督(39)は「日ごろの練習のたまものでもあるし、木村先生のノックで気持ちを吹き込んでもらったことがプラスに働いた」。8回バント安打で珍しくヘッドスライディングした岩間主将は「最後まで諦めたくない気持ちが自然に出てしまった。これが甲子園なんだなと。ファインプレーも、このチームでこんなに見たことがない。甲子園が力を引き出してくれた」と感謝した。

木村前監督は試合後に選手と再会した。「粘り強く、我慢強く最後の最後までよく頑張った。センバツ中止、私の異動、夏の大会中止と選手はずっと我慢してきた。彼らをほめてあげたい。今日は彼らが高校野球の魅力を体現してくれた」と、成長した姿に涙をあふれさせた。【野上伸悟】

<磐城ナインのコメント>

(1)沖政宗(3年) 試合を実現していただき感謝。先生、仲間に会えて幸せ。

(2)岩間涼星(3年) 甲子園でPlay Hardを実践でき楽しかった。

(3)小川泰生(3年) 最高の舞台でプレーでき楽しかった。先生、仲間に感謝。

(4)草野凌(3年) ここまで野球をさせてくれた両親に最高の恩返しができた。

(5)首藤瑛太(2年) 純粋に野球を楽しめた。この経験を絶対次に生かしたい。

(6)市毛雄大(3年) 甲子園で自分の力を出し切れて良かった。感謝したい。

(7)清水真岳(3年) 最後に甲子園でプレーでき、ヒットを打てて良かった。

(8)馬上斗亜(3年) 甲子園という最高の舞台でプレーできて幸せでした。

(9)竹田洋陸(3年) 最高の時間を過ごせた。ありがとうございました。

(10)樋口将平(3年) 甲子園で安打、封殺と最高のプレーができて楽しかった。

(11)佐藤綾哉(2年) 来年は自分がエースとして戻ってきて3年生の分も勝つ。

(12)国府田将久(2年) 楽しかった。来年も戻ってこられるように頑張りたい。

(13)柳沢諄(2年) 最後の打者になり悔しい。甲子園でプレーでき感謝したい。

(14)今野颯良(2年) 3年生の最後の舞台に出場できて光栄でした。

(15)上田賢(2年) 甲子園は最高の場所でした。また来年戻ってきたいです。

(16)菅波陸哉(3年) 甲子園で高校野球を終えることができ幸せでした。

(17)白土遥也(3年) 悔しいがこれからの糧にしたい。支えてくれた人に感謝。

(18)野田和孝(3年) 出場はなかったけど夢の舞台に立てて、やり切れました。

(19)鈴木隆太(2年) 3年生と甲子園で戦えて良かった。来年戻ってきて勝つ。

(20)野部福太朗(1年) 3年生と最後に甲子園という最高の舞台ででき幸せ。

☆遠藤百恵記録員(3年) 大好きな仲間と最後まで全力で戦えて幸せでした。

★後藤浩之部長(36) 選手に感謝。この試合を財産に伝統をつなげていく。