<甲子園高校野球交流試合:明石商3-2桐生第一>◇16日◇甲子園

日本ハム、ロッテ、ダイエーなどでパ・リーグ一筋21年、捕手として1527試合に出場した日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(60)が16日、「プロ目線」で甲子園高校野球交流試合を分析した。第1試合の明石商(兵庫)-桐生第一(群馬)では、明石商の中森俊介投手(3年)と来田涼斗外野手(3年)に注目した。

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明石商の中森については、力投タイプではないと感じた。カウント球は142キロ前後で、追い込んだ後、勝負どころでは147~8キロ。最速は150キロが出ていたが、同じストレートでも投げ分けていた。自分でコントロールしているのだろう。高校生ではあまりいないのかな、と感じた。

それが一概にいいことだとは言い切れない。仮にプロに進んだとすると、当然のことながら、投手のストレートに対する考え方は変わってくる。プロでは甘くなれば打たれる。行けるところまで全力で、というのが前提になってくる。

プロで対戦した投手で、力を加減していたのは郭泰源(元西武)くらいしか思い浮かばない。それだけ、基本となる直球を加減するのはすごく勇気がいる、ということだ。中森にとっては、この点はレベルに合わせてより一層深く突き詰めていくことが必要になる。

光る部分として、8回2死二、三塁で桐生第一の3番広瀬智に対して厳しく内角を攻めきった点があった。それまで内角を攻めて2度死球。そうした伏線がありながら、表情も変えずに厳しく攻めていた。度胸がある。また当てたらまずいな、と弱気な面が表情や投球に出てくるものだが、まるで楽天涌井のよう。何事もないかのように、徹していた。これはすごいこと。投手らしい気持ちの強さを見ることができた。

左打者来田は内野安打1本も、内容には高校生としてはレベルの高さを感じた。追い込まれてから変化球を頭に入れた場面。高校生なら真っすぐ狙いで、変化球には当てるバッティングが多くなるもの。来田は左腕宮下のスライダーに泳がされてはいるが、よく変化についていきながら、鋭いスイングをしていた。捕手の立場からすると、このわずかな違いの中に、これからの成長が見て取れた。(日刊スポーツ評論家)