元巨人の谷佳知氏(47)を叔父に持つ尽誠学園の福島武颯士(むさし)外野手(3年)が最後の夏を勝利で飾った。

この日、2打数無安打と打撃は振るわなかったが、2回に死球で出塁した際、1番菊地柚内野手(3年)の左中間二塁打で激走。一塁から回り本塁に飛び込んで生還した。「風があるので、(打球を)見たら抜けると思った。勝ててうれしいの一言です」と充実感をにじませた。

谷氏は母方の叔父に当たる。小学生の時にはティーバッティングを目の前で見たこともある。打球の音や強靱(きょうじん)な下半身を見てプロ野球選手のレベルを体感した。夏の選手権が中止になったときは電話をもらい「大学に行っても野球をするなら、今をどう乗り越えるかだ」とゲキをもらった。福島は「今日のことは(電話で)伝えたいと思います」と語った。

小学生の時に脱毛症を患った。髪がない自分を責めたこともあった。それを救ったのは野球。西村太監督(41)から「勇気を振り絞ってこい」と言われて臨んだ高校の入学式では「(髪のことについて)誰も何も言わなかった。いい仲間に巡り会えたと思った」と前を向くきっかけとなった。

この日、憧れの地で全力プレーをした福島は「自分と同じ病気を持っている人に、勇気を与えられたかなと思います」と笑った。卒業後は大学進学を希望し野球を続ける。【南谷竜則】