長崎県西海市の人口約5000人の小さな島にある県立高校の大崎が、春夏通じ甲子園7度出場の強豪私学、福岡大大濠を5-1で下し、初の九州王者に輝いた。

1、2年生部員29人が、佐世保市を中心にすべて地元長崎出身者ばかりの大崎が、準決勝で昨秋の九州覇者、明豊を撃破するなどの快進撃で頂点奪った。優勝の瞬間、選手はマウンドで輪になって歓喜。地元の熱烈応援にも応え、18年4月から指揮を執る清水央彦監督(49)は「いつも応援してもらえるおかげで、生徒は頑張った。感謝しかありません」と声を弾ませた。

投打に圧倒だ。九州大会3試合連続完投のエース右腕、坂本安司投手(2年)ではなく、風光明媚(めいび)な五島列島出身の左腕勝本晴彦投手(1年)が初先発。直球は120キロ台ながら、決め球のカットボールなど緩急で要所を締め4安打完封。1回にソロ本塁打で先制されたが「まだ初回。最少失点に抑えれば、点を取ってくれると思い投げた」と踏ん張った。

打っては、福岡王者に11安打を浴びせて5得点。冬場の20キロ丸太を抱えての短距離10本をはじめ、砂浜や山ダッシュで鍛えられたフィジカルを武器に圧倒だ。昨秋の九州大会1回戦で大分商に15安打を放ちながら敗れて以来、練習からコンパクトに鋭く練習を徹底したことも奏功した。

清水監督は、清峰と佐世保実の監督として2度甲子園に出場している。だが、大崎に赴任当時、部員は5人で廃部危機にもあった。そして、一から作り上げ、2年連続で秋の長崎を制すまでになったが「弱いチームは勝つことで学ぶ方が多い。2年半前にゼロから始めたが、勝たせることで勝ち方を覚えさせるのが指導者の責任と思っていた」と振り返る。

センバツ初出場も確実で、指揮官は「九州代表、長崎代表として行く。例年以上に鍛えて本大会に臨めればと思う」と気合を込めた。【菊川光一】

◆大崎 1952年(昭27)開校の男女共学県立高校。普通科に118人(女子33人)が学ぶ。校訓は「気魄、克己、英知」。主な卒業生はサッカー元鳥栖の島袋信介ら。所在地は長崎県西海市大島3468の1。酒井俊治校長。