狙い通りのスイングだった。2回無死満塁、日大三の7番、川島柾之三塁手(2年)は「2ボール。次、直球がきたら振ろう」と構えた。3球目、前橋育英・菊池楽の内寄り直球を振り抜き、右越えに放り込んだ。高校通算6号が、先制グランドスラムとなった。

今秋の東京大会は、決勝で東海大菅生に敗れた。勝てば来春センバツに当確ランプがつく一戦で、チームはわずか2安打1得点に抑えられた。川島も2三振を含む3打席凡退。前日の二松学舎大付との準決勝でも、2三振を含む3打席凡退だった。「神宮に入ってからは自分のスイングができず、メンタルの弱さを知りました」と、結果を受け止めた。

決勝に敗れた夜、町田の寮に戻ると、全体ミーティングが開かれた。小倉監督からは「菅生は初球から振っていた。力の差を痛感した。打てなきゃ勝てないぞ。バットを振る量を増やして、次は菅生を倒そう!」と言われた。選手だけでも話し合い、「投手は頑張ってくれている。打たなきゃいけない」と意思統一した。

今、チーム内では「夏、菅生を倒して甲子園に行く」が合言葉になっている。西東京の宿命のライバル。そこを超えない限り、甲子園への道はない。個別練習では、誰もが振る量を増やした。1日1000スイングほどいく日もある。

川島は3回にも1死満塁で打席が回ってきた。カウント2-2から低めのカーブを見逃し、フルカウント。さらにカーブが続いたが、またもバットを止め、押し出しで5点目を奪った。「ホームランの後。大振りにならないように逆方向を意識しました」。豪快な1発と、しぶとい選球眼で5打点を稼いだ。

12月からは、冬の強化期間に入る。来夏の東海大菅生との大一番を想定しながら、鍛錬の時を過ごす。【古川真弥】