エースの熱投も勝利には届かず。北海は開幕試合で神戸国際大付(兵庫)に延長戦の末、2-3でサヨナラ負けし、11年以来10年ぶりの春1勝はならなかった。

エース木村大成(3年)が自己最速タイの145キロをマークするなど好投も、2-1の9回にバッテリーミスで追いつかれ、延長10回に決勝点を許した。17年夏初戦で対戦した相手に雪辱ならず、大正、昭和、平成、令和の4元号甲子園勝利は、夏に持ち越しとなった。

   ◇   ◇   ◇

つかみかけていた聖地1勝が、するりとこぼれていった。2-1の9回1死一、三塁、相手スクイズを外そうとワンバウンドさせたが…。投球は捕手・大津の体に当たり三塁ベンチ側に転がり、それをつかんだ大津がダイビングで三塁走者にタッチに行ったが生還(記録は盗塁)を許した。延長10回には1死満塁からサヨナラ打を浴びた。146球の熱投をみせた木村は「自分の投球の力が足りなかったということ」と謙虚に負けを認めた。

初回から飛ばした。いきなり自己最速タイの145キロをマーク。得意のスライダーに相手打者のバットが何度も空を切った。4回まで無安打無失点も5回以降突如、安打を許し始めた。9回1/3を11安打8奪三振の3失点。「徐々にスライダーが思うところに行かなくなった。直球を多くしたら甘い球を打たれた。でも、しっかり投げればスライダーは全国で通用すると分かった。学んだことを次に生かしたい」。開幕試合での快投に、引き上げる際は7500人の観衆から、自然と拍手が湧き上がった。

兄広輝さん(創価大3年)の思いも背負っての投球だった。兄は同じ北広島東部中の投手として全国中学に出場。高校では01年センバツ4強の強豪、大阪の関西創価高に進学も甲子園には届かず、最後は右肘を痛め、高校で野球は引退した。父健一さん(52)ら家族とスタンドで応援した広輝さんは「ここで弟の登板を見られるなんて、感無量です」と、じっとマウンドを見守った。

チームとして、17年夏に敗れた神戸国際大付への雪辱も、大正からの4元号聖地1勝も果たせなかったが、まだ夏がある。ベンチ前で大津捕手から「また頑張ってここに戻って来よう」と声をかけられ、悔し涙の木村は顔を上げた。「夏秋と観客がいなかったからスタンドに人がたくさんいて、少し舞い上がった」。5カ月後、今度は歓声を力に変えられる投手になって、この地に戻って来る。【永野高輔】

▽木村をリードした大津 (同点にされた後)変化球を合わせられていたので真っすぐで強気の投球をしようと木村と話した。木村自身も疲れが見えていたけど、あいつも負けたくないという気持ちで最後、ギアを上げるぞとやっていた。こんな温かいところでやるのは久しぶり。気候の面でも(疲れが)出たと思う。

▽9回2死から中越え二塁打を放った主将の宮下 開幕試合だからと変わらずにやった。球場に入る時間が長かったので、そこでとけ込むことはできました。

▽2回2死満塁で押し出しの四球を選び大会初打点を挙げた杉林 真っ直ぐを待っていたが、投手の代わり際でボールが続いた。結果的に1点につながったのは良かった。。

▽4回先頭で左前打を放った尾崎 (大阪出身で)普段、中学の時に来ていた球場だったので、そこでプレーできたのはすごくうれしかった。また帰ってきてプレーしたい。

▽5回先頭で右翼線二塁打など2安打の江口 チャンスをつくれたのに、もう1点が取れなかったのが大きい。すごく悔しい。

▽バント安打含む2安打の関 1本は、自分の武器である足を生かせた。(6回の)守備でポテンヒットを与えたところもあったので、外野手間の声掛けなど、修正していきたい

▽日本ハム栗山監督(開幕戦をテレビ観戦) 本当に木村君、素晴らしいピッチャーだね。野球の勝敗っていうのは…身を切られる思いで見ていた。球児たちには『いい試合をありがとう』と伝えたいし、逆に彼らの戦いは我々の参考にもなる。あれだけ命懸けで野球をやってくれるから、こっちが感じるものがある。高校野球が帰ってきたなというのは、うれしかったね。

◆北海の甲子園データ 開幕戦は春夏計10度目だったが、通算で2勝8敗(春3度=1勝2敗、夏7度=1勝6敗)となった。甲子園通算成績は春12勝13敗(夏は21勝38敗)となった。

◆4元号勝利ならず 大正、昭和、平成で勝っている北海が、令和で勝利ならず。初の4元号勝利をかけた学校は19年夏の静岡、米子東、高松商、広島商に次ぎ5連敗。今大会で可能性があったのは北海だけで、またもお預けとなった。

○…北海OBでもある1番杉林一塁手の父亮輔さん(47)、兄拓夢さん(札幌学院大3年)が、杉林家初の甲子園出場を見届けた。亮輔さんは2年夏の甲子園でスタンド応援、3年時に主将を務めるも春夏とチャンスを逃していた。拓夢さんは南北海道大会3連覇した15~17年に在籍も、甲子園メンバーには入れなかった。次男蒼太が今大会の第1打者となり、亮輔さんは「ついに願いがかなった」。拓夢さんは「父と私の分まで、という思いを感じる」と目を細めた。

○…前回甲子園出場した17年夏のメンバーがスタンド応援した。当時三塁手の竹元拓海内野手(関大3年)、控えだった伊藤源投手(同大2年)らが後輩のプレーを見守った。4年前と同じ相手との再戦。伊藤投手は「4年前は、ずっとリードしていたのに安定感抜群の多間さんが本塁打を打たれて、あっという間に終わってしまった。今度は勝ってほしい」と祈ったが、リベンジはならなかった。