明豊(大分)が全員野球で19年に並ぶセンバツ4強入りを決めた。選抜高校野球大会第9日は29日、甲子園球場で準々決勝が行われ、明豊は智弁学園(奈良)と激突。ピンチを迎えた6回に阿南心雄外野手(3年)がフェンスに激突しながら好捕。3試合で無失策の固い守備がチームの持ち味だ。組み替えた打線もつながり、11安打6得点。投手は3人の継投で、強打の智弁学園を4点に抑えた。新チーム発足時の「史上最弱」から「史上最強」へ-。チーム一丸となって、初優勝に突き進む。

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みんながチームを助け、みんなが戦った。幸主将は「全員の気合が入っていた。この試合をとらないと日本一はないので、勝ててよかった」と話した。

6回に2失点し、さらに2死一、三塁。智弁学園・山下の打球はぐんぐん伸びた。抜ければ同点の当たりを、阿南が背走しながら目いっぱい伸ばしたグラブに収め、フェンスに激突。うつぶせになり、しばらく動けなかった。頭もヒザも、足首も痛い。ピンチを救う美技。耳に届いたのは、球場全体からの拍手だった。「捕ったときを覚えてない。うれしかった。小さい頃、テレビで見ていた歓声を自分が受けるのは不思議な感じ」。川崎監督は「技術というよりかは執念」とたたえた。

3戦を重ねて無失策と、守備が勝利を支えている。練習では「ノーエラーノック」を週2~3回行う。主力の25~30人が全員ノーエラーで回るまで終わらないプレッシャーのかかる練習。長い時は40分も続く。練習で鍛えられた心と技術が本番でも生きた。

打線は、3試合連続で大幅に入れ替えた。「ザ・4番」の強打者はいないが、全員がつなぐ。指揮官は「3、4、5番にこだわらずに、どうやったらつなぎがうまくいくかなと思った」と意図を明かした。投手は、想定通りに3人の継投で強打を誇る智弁学園に的を絞らせなかった。発足時に「史上最弱」とハッパをかけたチームが4強入り。「史上最強」に向け、川崎監督は「執念で勝ち上がってきているような感じ。ハングリー精神、強い野球に対する思い。やろうと思えばなんだって出来ると証明したいとやってくれている」と、全国制覇を見据える。【保坂恭子】

◆無失策試合 明豊-智弁学園戦で記録。今大会5度目。明豊は今大会3試合とも無失策試合。

◆大分県勢の春4強 67年津久見、76年日田林工、19年明豊に次いで4度目。67年優勝の津久見以来となる決勝進出なるか。

◆愛知対大分 準決勝で中京大中京と明豊が対戦。過去は愛知県勢が大分県勢に対し春夏通算8勝0敗。