明豊の木原裕飛(ゆうひ)コーチ(35)が、最後の1日を終えた。「最高です。本当に、そのひと言です」と笑顔だった。

本来は3月31日でコーチを退任する予定だったが、雨天で決勝が1日順延となったため、この日が最後になった。

ノッカーを務める木原コーチに生徒たちが大会前、言った事が現実となった。「必ず、ノックを5回打たせます」。5回打てるのは、決勝進出するチームだけ。その約束通り、過去最高の順位まで勝ち進んだ。「1戦1戦、成長している。毎試合が100点。全部100点でした。1つ1つに感動しました」。

初戦から5試合とも、試合前のノックは打つ方向も、本数も、すべて同じだった。「やるべきこと、今までやってきたことを、そのままやる」という信念だ。

今大会、無失策のまま終えた。特に、左翼を守った阿南心雄外野手(3年)は準々決勝、準決勝とビッグプレーでチームを救った。内野手から転向し、個人練習を含めてとくに時間をともに過ごした。「本当に努力していた選手。一生懸命、泥臭く練習してきました」と振り返る。

川崎監督の就任翌年から9年間、コーチとして支えた。ともにお風呂に入ったこともある「家族のような存在」という。選手とは練習でも、学校でも、寮でも一緒に過ごしてきた。「甲子園の優勝を決める試合でノックを打たせてもらえて、本当に感謝です」。ノックで、コーチが思いを込めた球を受けた選手たちは、決勝で堂々と戦った。