大会序盤のワクワク感は日を追うごとにヒヤヒヤする思いに変わった。不安が的中した。3月31日の準決勝。中京大中京のエース畔柳亨丞投手(3年)が次打者席にいない。医者も小走りでベンチへと消えた。

この日は先発を回避し、4回途中から救援登板していた。だが、2回1/3で緊急降板。畔柳が「肩を作っているときから肘が重くて力が入らなかった」と話せば、高橋源一郎監督(41)も「コンディションが良くなかった」と説明。無理はない。1週間で1日おきに4試合目。すでに初戦の25日から131球、110球、138球を重ねていた。

プロ野球を18年取材してきた感覚だが、そもそも1週間で4試合は多すぎる。屈強なプロですら先発の中4日を極力避ける。ましてや、成長途上の高校生だ。あるプロ野球関係者は「1カ月で投げられるようになればいいけど…」と畔柳を心配していた。継投を活用してきた東海大相模と明豊が決勝まで勝ち上がったのも、警鐘と受け止めたい。

今大会中、監督には球数に関する質問が殺到した。初めて「1週間500球以内」の球数制限を導入。畔柳は残り121球を投げられるはずが31球で降板。基準は目安にすぎないだろう。監督は勝ちも選手の将来も背負う。判断の是非を問い、責任を押しつけるのは酷だ。球数よりも、過密日程解消の思いを強くする。

大会の運営経費や甲子園本拠の阪神の公式戦日程など、懸案は承知の上だが準決勝、決勝を毎週末に行うなど、ゆとりのある日程が実現しないものか。大会終盤の大一番こそ、快速球のワクワク感を味わいたい。

危機感を持つ日本高野連も「投球制限検証ワーキンググループ」を設け、20年から3年間を「1週間500球」の試行期間とするが悠長に構えられない。大会本部は「『日程により不公平感が生じる』といった指摘があることは承知している」とも説明。「エース」を死語としないためにも畔柳が投げた410球の意味を問いたい。【アマ野球担当キャップ=酒井俊作】