関東第一・石見陸捕手(3年)は一塁ベース上で激しく両手をたたき、喜んだ。2回2死一、二塁。前の打者が死球を受け、回ってきた好機で初球を捉えた。「チャンスは初球から割り切っていこうと思いました」と、日大三・宇山の甘くきた直球を右前に運ぶ先制打を放った。

塁上で黒いフェースガードを装着した。5月の関東大会決勝、専大松戸戦。8回にソロを放ったが、9回の打席で顔面に死球を受け退場。救急車で病院に運ばれた。左目付近の骨は、まだ折れたまま。一時は視力も低下したが、幸い、かなり回復し、実戦復帰を果たした。

実は、打席でもフェースガードをつけるよう言われたが「バッティングに集中したい」と、装着せずに打席に立った。恐怖心を上回る闘争心で、4回は犠飛、6回は追加点につながる犠打を決めた。

優勝を「うれしいです」と喜んだ後、すぐにこう続けた。「コロナ禍の中、試合が出来たことがうれしいです。三高さんは難しい状況だったと思います。試合ができたことに感謝したいです」。陽性者が出たため、一時活動を休まざるを得なかった相手校への配慮も忘れなかった。