<高校野球愛知大会:愛知産大三河10-0半田農>◇3日◇1回戦◇熱田愛知時計120スタジアム

夏の愛知県大会が開幕し、全国最多の179チームによる甲子園を懸けた戦いが始まった。半田農は愛知産大三河と対戦。3年前の代表校相手に終始苦しい展開が続いた。ベンチが重たい雰囲気の中、三塁コーチスボックスから山田瑞己(みずき)内野手(3年)が大声で味方を鼓舞し続けていた。

「3年間やりきりました」。大敗した試合後、山田は笑顔で言い切った。野球を始めたのは高校入学後。小学時代ではバスケットボール、中学では水泳をしていた。きっかけは「誘われたから」と単純明快。高校野球の世界に誘ってくれたのはチームの主将・鈴木大介捕手(3年)。2人は幼なじみで「大介に誘われたから即答でやると決めた」とまた笑った。

高校野球は甘い世界ではなかった。「体力的にも技術的にも皆についていくのに必死だった」。農業実習など学業と部活の両立にも苦労した。それでも試合で活躍する日を夢見て練習を続けてきた。

迎えた最後の夏。残念ながらベンチ入りした3年生で山田だけ出番はなかった。それでも三塁ベースコーチとして大声を出し、ピンチの場面では伝令として監督の指示を伝えた。「チームのために自分のできることをする」。陰ながらチームを支えた。

山田は「もっとみんなとやりたかった」と寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに別の感情で胸が熱くなった。「高校野球に誘ってくれた大介に感謝したいし、心配をかけた両親にも感謝を伝えたい」。3年間を一番近くで見守ってきた父大介さん(45)は「最初はついていけるか心配で背中を押してあげられなかった。彼なりによく頑張ったと思う。自分じゃ到底できない。息子ながら尊敬する」と背番号10をねぎらった。

100人いれば100通りの高校野球がある。苦しくても最後までやり抜いた3年間が、何よりの財産だ。【山崎健太】