<高校野球兵庫大会:西脇10-0多可・吉川(5回コールド)>◇10日◇1回戦◇ベイコム野球場(尼崎)

兵庫で唯一の連合チーム、多可・吉川が初戦で姿を消した。2回までの8失点が響き、5回コールド負け。昨夏の独自大会で対戦した両校が新チームから連合。コロナ禍で週末の練習試合=合同練習という厳しい環境の中「Taka」「YOKAWA」の2つのユニホームを着た12人が“昨日の敵は今日の友”として、力を合わせて戦った。

多可の茨木建策監督(36)は「緊張もあって1、2回の失点が…」と悔しそうだ。0-5の2回1死二塁の場面で、吉川のエース大西一平(2年)から多可の岩本翔塁(かける)三塁手(2年)に継投したが、相手の勢いを止められず0-8。岩本が打者4人に投げた後、再び登板した大西が3、4回を無失点でしのいだ。指揮官は「結果論ですが、早めのスイッチで流れを変えたかった。あそこで勝負をかけないと厳しいと判断しました」と話した。

兵庫唯一の連合チームだが、急造ではない。実は昨夏の大会初戦、多可は相生学院との連合で吉川と対戦、4-1で勝った。「それが今度は味方ですから。縁ですかね。昨夏の段階で、お互いが次も部員がいないのは分かっていたんで」と茨木監督。あうんの呼吸で即、タッグを組んだ。

部員も予感があった。対戦時「次は吉川と…」といううわさがあった。連合の主将で多可の西山一沙一塁手(3年)は「試合で大西が(吉川の)センター守ってて“足速いし、バットを振れるヤツやな”と楽しみでした」と、戦いながらすでにリサーチしていた。

チーム作りに1年の時間はあったが、状況は厳しかった。両校の距離は車で約40分。ただでさえ近くない上、コロナ禍だ。行き来しての合同練習は基本NG。週末に練習試合を遠征の形で組み、実戦をそのまま練習にして、試合後のミーティングでコミュニケーションをはかった。こなした試合は約40に上った。

チーム編成も難しかった。吉川7人、多可5人の12人が都合よく9つのポジションに合致するわけもない。投手がいなかった。この日、責任教師でベンチ入りした吉川の北口耕介監督と、茨木監督が話し合い、遊撃手を希望していた吉川の大西を指名し、コンバートした。「ストライクが入る。球速もそこそこあるから、無理やりでした」と茨木監督。「投手なんて全然やったことなかった」という大西とバッテリーを組んだのが、多可の秋山明毅(はるき)捕手(2年)。学校が違う上、お互いが話しかける勇気もなく、最初はサインのやりとりもままならなかった。

連合チームで昨秋、今春、夏の公式戦は全部初戦敗退に終わったものの、新チームも「多可・吉川連合」で調整している。ただ、12人から3年が4人抜け、メンバーは吉川6人、多可2人の合計8人。1人足りない。「早速、やる気のある子を探して、声を掛けます」と茨木監督。新チームの仕事は“求む! 新入部員”から始まる。【加藤裕一】