仁川学院が競り勝ち、17年以来、4年ぶりの初戦突破を果たした。同点の7回1死三塁。主将の石橋晃亮内野手(3年)が速球を強振すると、左翼越えの勝ち越し適時二塁打になった。先発右腕の長沢颯斗投手(3年)は低めに制球する丁寧な投球で3回から7回まで無安打に抑え、最後まで1人で投げ抜いた。同校は3年生3人しかいないが、最後の夏で意地を見せた。

12安打6得点の快勝に、辻元伸一監督(46)は「佐藤からいただいた打撃マシンの結果が出たかな。(2桁安打は)想定外です」と笑顔を見せた。OBには、阪神で新人ながら活躍する佐藤輝明内野手(22)がいる。年明けには打撃マシンを寄贈されて練習で打ち込んできた。石橋が「(マシンで)ストレートを速めに設定している。真っすぐを自分のタイミングで打てます」と話せば、1回に中越え先制適時三塁打を放った4番の奥村樹内野手(2年)も「速い球にだんだんついていけるようになりました」と感謝。8回には2死満塁で飯塚亮太内野手(2年)が三塁強襲の2点適時打を放ち、突き放した。まさに「佐藤輝効果」でもぎ取った貴重な白星だった。

夏の兵庫大会(代替大会含む)は3年連続で初戦敗退していた。公式戦も5連敗中で、19年8月31日の宝塚東戦の勝利を最後に白星から遠ざかっていた。佐藤輝は後輩に対して「どんな高校に入っても、自分が努力すればいいところまでいける」とメッセージを寄せていた。奥村は「仁川だから、とマイナスなことを思ってしまっていた。僕は変われた気がします」と前を向けた。置かれた場所で、ひたむきに生ききる。セ・リーグでここまで20本塁打をマークする佐藤輝の「金言」が、甲子園出場ゼロの母校で生かされている。負の流れを断ち切る、ナイン一丸の奮闘だった。【酒井俊作】