慶応・森林貴彦監督(48)が男泣きした。試合直後は生徒にベンチの撤収を急がせながら「そうじを頑張れ、頑張れ、これで終わりじゃないぞ」と明るく声を上げていたが、取材対応を進めるうちにみるみる目に涙をため、何度もタオルで拭った。

「久々に泣かされましたね」と、声を震わせながら口を開くと「故障者が多くて、前田も投げられるかどうかも分からない中で…。こうしてみんなでチームを引っ張ってくれた。泥くさく点を取ってくれたし、こういうゲームをやろうよとずっと言ってきた。やっとチームになった。常にお前たちが伝統をぶち切ろうとしてると言ってきました。人任せ、自分よがりで、慶応の伝統をぶちこわしてきた、そう言ってきましたが、つなぐような試合をしてくれました」と、一気に胸の内の思いを出した。

森林監督の感涙に、この試合2安打と堅守でチームをもり立てた金岡優仁内野手(3年)も驚いた表情。「びっくりしました。自分たちが苦しい状況で、全員が力を合わせないと桐蔭には勝てない。1人1人がつないだ野球ができました」。

敵失に乗じて得点した試合巧者ぶりも見せた一方で、左腕の荒井駿也(3年)から右腕前田晃宏(3年)、さらに荒井への継投もはまった。また、守備では2点を失いなおも2死二塁で、桐蔭学園・田中朝陽内野手(3年)の右前打で、右翼真田壮之外野手(3年)から坪田大郎捕手(3年)への好返球で同点の走者を刺すチーム力の高さを見せた。金岡は「とてもいいスタートが切れました。どうしても勝てなかった桐蔭に勝てましたし、こうしてものすごい試合で勝てたのは大きいです」と言葉を弾ませていた。