天理の最速148キロ右腕・達孝太投手(3年)が3安打完封で、チームをベスト4に導いた。

国内8球団、メジャー1球団のスカウトを前に、法隆寺国際に被安打3、与四球1。13奪三振で球数84の驚異的な投球を見せた。センバツ4強、今秋のドラフト上位候補と騒がれながら右肘炎症、左脇腹痛で出遅れ、夏は背番号11。先発4回3失点だった19日の大和広陵戦から中4日、193センチの大型右腕が劇的に変身した。

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84球目。達が直球で最後の打者を一邪飛に打ち取った。センバツ4強後では、5月の県大会準決勝・畝傍戦の7イニングを上回る、最長の9回完封だ。「今日が一番、良かったと思います」と満足感を漂わせた。

完璧だった。奪三振は5連続を含む13個。193センチの長身オーバーハンドから、初回にネット裏のスピードガンで144キロを記録した速球、フォークが低めにズバズバ決まった。スタミナの消耗を抑えるため、遊び球も使わない。3球三振は5個。2回にストレートの四球があったが、それ以外で2ボールになった場面は1度だけ。1イニング平均投球は、奪三振ラッシュに不似合いな9・3球だった。

夏初登板の19日、大和広陵戦は4回で被安打6、与四球4で3失点。自己採点は「0点」。中村良二監督(53)には仲間を前に「調子に乗るな」としかられた。

達は「ショックというより、自分がどうすべきかを考えた」と、フォームを入念に見直した。

<1>テークバックの上げ方 <2>頭の位置

<3>顔の向き

<4>左足を着くタイミング

4ポイントの再確認でこの4日間を過ごした。6回表、先頭打者をフォークで見逃し三振に仕留めた。「左足を着く瞬間に“振って来ない”とわかって、ストライクを投げた」。神業のリリースができるまで、バランスが良くなった。

劇的な変貌に中村監督も目を細めた。「今までで一番良かった。安定していましたね。カウント球に真っすぐ使って手を出させて、球数も減らして…。そんなとこまで計算しとるんちゃうかと思うほどでした」。

センバツ4強に貢献したが、右肘や左脇腹の不調で今夏は背番号11。だが、プロ注目右腕はしっかり輝きを取り戻した。春夏連続の甲子園まであと2勝。「まだ60、70点です。初球の入りで浮いて打たれた。(被安打3本中)2連打もあった。無駄な四球もあった」。辛めの自己採点でギアを上げ、ラストスパートに入る。【加藤裕一】

○…天理・達をメジャー1球団、国内8球団のスカウントがチェックした。ロイヤルズの大屋・国際スカウトは「今日どうこうでなく、彼は将来を見てやってるはず。ピークは体ができた時。今日は以前のような球の角度が戻ってきた」と話した。DeNA欠端スカウトは「まだ球にムラはあるけど、指にかかった球はしっかり来ていますね」。広島・田村スカウトは「普通にいいです。プロから見て、彼は非常に魅力的」と話した。