雨にたたられた夏の甲子園に激震が走った。全国高校野球選手権の大会本部は17日、新型コロナウイルスに集団感染した宮崎商と、感染者1人の東北学院(宮城)の2校の出場辞退を発表した。

宮崎商は陽性者13人、保健所から8人が濃厚接触者と判定された。一方の東北学院は個別感染のため大会出場自体は可能だったが、学校側の判断で辞退に至った。宮崎商と対戦予定だった智弁和歌山、東北学院の相手、松商学園(長野)は不戦勝が決まった。甲子園での不戦勝、不戦敗は春夏通じて初となった。

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東北学院の出場辞退の理由に首をかしげた。「2回戦に出場することになれば、感染者・濃厚接触者の特定につながる恐れがあり、生徒の将来に影響を及ぼす可能性がある」(阿部恒幸校長)。生徒の将来を思う気持ちは分かる。だが同時に、感染していない選手たちのプレー機会は奪われた。感染した選手に「自分のせい」と十字架を背負わすことにもならないだろうか。

当然、全てを熟考した上での苦渋の決断だったとは思う。大会本部は「学校の判断を尊重するが、慎重に検討してほしい」と伝えたそうだ。参加してもらう立場であり、「辞退します」という学校を引き留めるのは難しい。

一方で、宮崎商については「辞退」という表現に違和感を覚えた。内訳は明かされていない(明かす必要もない)が、陽性者が13人も出れば、チーム続行は難しく参加取りやめは致し方ない。ただ、「辞退」だと、学校の意思ということになる。宮崎商の場合、大会本部が集団感染と判断し、そう伝えられた学校側が大会本部に「辞退」を連絡した経緯がある。なぜ集団感染と伝えたときに「参加を取りやめてください」と言わなかったのだろう。単なる形式上の問題ではない。大会本部の判断として「参加差し止め」とすることが、主催者の責任であり、そうすることで宮崎商側も結果を受け止めやすくなるのではないか。

コロナ禍で手探りが起きるのは仕方ない。今回、大会本部は、個別感染の場合は2戦目以降も登録選手変更を可能とした。以前は、チーム初戦の前日までだった。柔軟な運用を評価したい。高校生が努力の成果を発揮する場が最大限、守られる大会であってほしい。【古川真弥】