明徳義塾(高知)は投打の歯車がかみ合い、16年以来、5年ぶりに8強に進出した。2回1死後、5番代木大和投手(3年)が内角速球を強振し、右翼ポール際に先制の甲子園初アーチを放り込んだ。6回には加藤愛己捕手(3年)が速球をとらえると、浜風に乗って、左翼ポール下に本塁打を架けた。高知大会はチームで1本塁打だった。今夏の公式戦で初の1試合2アーチが勝因になった。

エース代木は9回3安打6奪三振の完封勝利を挙げ、馬淵史郎監督(65)は「本当は7、8、9回は吉村と考えていた。球数も少ないし、あの調子だったら最後までいけるかなと、思って行かせたんですけど、よく投げてくれました。今日は代木に尽きます。勝てるときはマウンドでオーラがある」と最敬礼だった。

相手は初戦17得点の松商学園だった。馬淵監督はアンテナを張り、情報をかき集めた。「(松商学園は)打撃のチームです。ただ、前半に点を取れなかったらズルズルいくチームだと聞いていました」。綿密にゲームプランを立てて、試合前、代木に言った。「とにかく3回まで抑えろ」。1回、先頭に四球を与えるなど、制球も乱れ気味だったが踏ん張った。終わってみれば102球の好内容。名将のシナリオ通りに試合を支配し、代木も振り返る。

「1、2回戦は早い段階で吉村にスイッチして、思うような投球をできなかった。昨日、監督に『エースの意地を見せろ。ここらへんで調子を上げなあかん』と言われていた。投げきらないと3年間やってきた意味がない」

不本意だった1、2回戦は投球が突っ込み気味だったという。前日24日の練習で投球フォームを修正。指揮官に「足を上げるとき、真っすぐ立ってから投手に向かっていったらどうか」とアドバイスされた。好調だった昨秋の投球映像を確認。代木も「しっかり軸足に体重、パワーをためられるようになった。突っ込みを抑えられて、リリースも安定した。監督に感謝ですね」と手応えを口にした。

チームは、試合巧者ぶりを見せつけてきた。初戦の15日県岐阜商は馬淵監督の攻めの継投で勝負の流れを引き寄せた。22日のノースアジア大明桜(秋田)戦は足攻めで今秋ドラフト上位候補の風間球打投手(3年)を攻め落とした。この日はエースが完封し、2本塁打で制した。馬淵監督は「今日は野球の神様が、甲子園の風が味方してくれた。代木のホームランも普通、ファウル。押し戻されて入ってくれた」と笑った。26日の準々決勝は智弁学園(奈良)と激突。全力で名門対決に挑む。【酒井俊作】

◆無失策試合 明徳義塾-松商学園戦で記録。今大会5度目。