コツコツは裏切らない! 誰もが真面目と認める4番が、最後に勝利をもたらした。

東京大会決勝は、国学院久我山が逆転サヨナラで二松学舎大付を下した。1-3の9回2死満塁で、不振だった成田陸内野手(2年)が右越えに走者一掃の3点適時二塁打を放った。84年以来37年ぶり3度目の優勝を果たし、来春に11年以来11年ぶり4度目となるセンバツ出場を確実とした。関東、東海でも決勝が行われた。優勝校は明神宮大会(20日開幕)に出場する。

   ◇   ◇   ◇

ヒーローは歓喜の輪の中心に…いなかった。二塁に達した成田は、本塁付近でもみくちゃになっている仲間たちが目に入った。「なんで、僕のところに来ないんだろう」。だが、すぐこう思った。「サヨナラはチーム全員のもの」。ちょっと遅れて、輪に加わった。

2点を追う9回、2死満塁で回ってきた。尾崎直輝監督(31)に「強く打ち切れ。自分の力を信じろ!」と送り出された。前の試合まで打率2割に低迷。それでも4番で使い続けてくれた。「自分を信じてくれている。その監督を信じよう」。初球カーブを逆方向へ。背走する右翼手のグラブにいったん当たって、フェンスに到達。人生初のサヨナラ打に「苦しみながらやってきました。良かったです」と声を弾ませた。

コツコツは裏切らない。前日の準決勝は2三振無安打。日大三に13安打14得点の打線で沈黙した。家に帰ると、自宅の駐車場で黙々とバットを振った。暗い中、1時間半近く。「体の開きが早くなってました」。素振りで修正を図り、緩いボールを右に打てた。

誰もが「真面目」と口をそろえる。担任でもある尾崎監督は「一番前の席で、しっかり授業を受ける」と人間性にもかけて使い続けた。好きな言葉は「初志貫徹」。理由は「面倒くさがりなので。最後までやるように」と己を戒めるためだ。真面目と言われていることには「真面目ではないかな」と照れながら、やっぱり真面目に答えた。今夏は準優勝と甲子園まであと1歩だった。投手、捕手も兼ねる4番が、みんなの願いをかなえた。【古川真弥】

▽国学院久我山・上田太陽主将(成田について) 調子が悪いと悩んじゃうんですが、一生懸命で真面目。いいところで打ってくれる。さすが4番です。

▽国学院久我山・尾崎直輝監督(サヨナラ勝ちに) 甲子園に行くならドラマしかないと。(9回1死、代打で安打の)1年生の鈴木から始まって、全員野球の結果だと思います。