規格外の1年生スラッガーがMVP級の働きだ。花巻東(東北・岩手)佐々木洋監督(46)の長男麟太郎内野手が「3番一塁」でフル出場し、衝撃の全国デビュー弾含む3打点を挙げた。国学院久我山(東京)との開幕試合。第1打席のファーストスイングで高校通算48号を放って先制し、3、7回には同点の犠飛を決めた。同校OBのエンゼルス大谷が18日(日本時間19日)にア・リーグMVPに満票で初選出。チームに明治神宮大会初出場初勝利をもたらし、先輩の快挙にも花を添えた。

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青青空が広がる神宮で「ショータイム」ならぬ「麟太郎劇場」が開演した。野球人生で初の全国舞台。いきなり佐々木がみせた。1回2死走者なし、カウント1-0から外角132キロ直球をフルスイング。高校通算48号のソロ本塁打を、弾丸ライナーで右翼席に運んだ。公式戦11本目(練習試合37本)。大谷は花巻東での3年間で56本塁打と量産したが、それをはるかにしのぐペースでアーチを描く。偉大な先輩の記録に早くも「マジック8」に迫った。

まさに主役だ。豪快な打撃で7000人の観客をどよめかせ、万雷の拍手を浴びた。インパクトから右翼席着弾まで約5秒。表情を変えずに淡々とダイヤモンドを1周し、力強く手をたたいてホームイン。右手でガッツポーズを作った。次打者の田代旭捕手、小沢修外野手(ともに2年)、ベンチのナインと次々にハイタッチをかわし、ようやく笑みを浮かべた。

「初回に何とか自分の打撃で先制点をつかめたらという思いで打席に入りました。たくさんの方々の応援もあり、いい形で先制点を挙げられて良かったです」

先月の東北大会期間中に左すねを疲労骨折し、完治はしていない。練習時は痛み止めを服用も、試合では「眠気や胃に負担がある」ため、飲まずに臨む。痛みを抱えながらも先制弾。さらには3回に中堅へ同点犠飛、7回にも再び中堅へ同点犠飛を決め、四球を挟んで3打数連続で打点を挙げ、逆転につなげた。

中学時代は大谷の父徹さんが監督を務める金ケ崎リトルシニアでプレーし、中学3年ではエースだった。高校入学後は大谷を育てた父の佐々木監督から薫陶を受け、今春から主力に定着。夏までは大谷が下級生時に身につけた背番号「17」を継承した。「翔平さんが活躍しているからこそ自分たちもやらなければいけない」と自覚十分。花巻東のニューヒーローが、大谷先輩のように新たな道を切り開いていく。【山田愛斗】

▽花巻東・佐々木監督(佐々木の先制本塁打に) 大会前は非常に調子が悪かったので、よく頑張って、流れをつかむ先制の本塁打だったと思います。

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