夏の甲子園を経験した帯広農3年生部員がそれぞれの道へ歩み出す。主将としてチームを引っ張った佐伯柊(3年)は9日、札幌国際大に合格した。ソフトバンクにドラフト1位指名されたノースアジア大明桜の風間球打と甲子園で対戦した体験を糧に、将来は指導者として聖地を目指す。チームメートの谷口純也(3年)も札幌国際大、武藤大斗(3年)は札幌大に合格した。

この日18歳の誕生日を迎えた佐伯が新たなステージで夢を追う。札幌国際大スポーツ人間学部スポーツ指導学科に合格。夏までは丸刈りだったが今ではすっかり髪も伸びた。「保健体育の教員になることを目標にしている。経験したことや技術を子どもたちに伝えてまた甲子園を目指したい」。同学科では中学・高校の教員採用試験に対応したカリキュラムや講義が組まれている。昨年度保健体育の教員資格を取得したのは21人。ほかにもスポーツ関連の現場で活躍している卒業生の多い大学を選んだ。

2度甲子園の土を踏んだことで、指導者への思いが徐々に膨らんでいった。昨年高崎健康福祉大高崎との交流試合では2番に座り3安打。今夏は主将で中軸の3番を任された。1回戦で世代最速の157キロを誇る風間と対戦。チームは2-4で敗れたが、自身は風間から2安打と結果を残した。「球が速かった。注目投手と対戦できたということで、この貴重な体験を大学で生かしたい」とさらなるレベルアップを誓う。

札幌国際大は現在札幌学生野球2部にいる。1学年上には水上流暢ら、帯広農野球部の先輩もおり「練習しやすい環境だったり雰囲気がよかった」というのも進学の決め手の1つになった。

173センチと特別大きくはないが、今は帯広市内のジムに通ってトレーニングするなど、夏場63キロだった体重は5キロほど増量。木製バットでの振り込みも増やしている。「大学野球は高校とレベルが違う。追いつけるようにまずは体づくりをして技術をあげて、できるだけ早くレギュラー入りしたい。1部リーグに上がれるように貢献したい」と思い描いている。【山崎純一】

◆佐伯柊(さえき・しゅう)2003年(平15)12月9日、帯広市生まれ。帯広稲田小1年から稲田タイガースで野球を始める。帯広農では1年春からベンチ入り。2年夏の交流試合は2番遊撃、3年夏は主将として甲子園出場。好きな選手は西武源田壮亮。好きな食べ物は焼き肉。173センチ、68キロ。家族は両親と兄。右投げ右打ち。

○…武藤は投手1本で勝負する。農業系の大学進学も考えたが、前監督の前田康晴副部長(45)に背中を押され、札幌大で野球を続けることを決めた。高校時代は投手兼一塁手だったが、大学では投手に専念することを自身で決断。実家は音更町でじゃがいもなどを生産する農家を営んでおり「将来は実家の農業を継ぐ予定なので、経営の方も勉強していきたい」と気を引き締めた。

○…谷口が甲子園で味わった悔しさを大学野球にぶつける。佐伯主将とともに札幌国際大に合格。昨夏の交流試合と今夏甲子園では、ともに9番打者として先発フル出場を果たした。昨年は2安打2打点の大活躍だったが、今年は好投手風間の前に無安打に終わった。「悔しい思いもあって、野球をもっとやりたいと感じた。将来は保健体育の教員になりたい」と話した。

▼21年夏の甲子園1回戦、帯広農対ノースアジア大明桜(秋田) 世代最速157キロを誇る風間球打投手と対戦。12日の試合は4回まで無安打に抑えられ0-5と劣勢な展開だったが、激しい降雨によりノーゲーム。雨の影響で2日間の順延を経て臨んだ15日の試合では0-1の3回に同点に追いつき、4回に逆転。しかし5回に3点を失い2-4で敗れ、甲子園1勝はならなかった。