奥会津にある山あいの町に、甲子園へと続く光が差した。日本高野連は10日、来春の第94回選抜高校野球大会(22年3月18日開幕、甲子園)の21世紀枠の地区候補9校を発表した。東北からは只見(福島)が選ばれた。日本有数の豪雪地帯で、冬場の練習が著しく制限される。過疎が進む町の支援も受け、工夫をこらした練習で今秋の福島県大会8強に進んだ。

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室井莉空内野手(2年)は福島・会津若松出身。02年に始まった只見町の「山村教育留学制度」でやってきた。会津若松も雪は降るが、せいぜい膝まで。3メートルの積雪に「びっくりしました」と振り返った。

町の人口は55年の約1万3000人をピークに減り続け、現在は約4000人。若者を呼び込むことで、少子高齢化が進む地域の活性化を図る。各学年約10人おり、現在、野球部員は5人(会津若松4人、神奈川1人)。町は寮や塾を提供。昼の弁当も含め、3食を用意する。室井は中学のチームの先輩に只見に進んだ人がおり、親元を離れる決意をした。「掃除、洗濯。親に甘えていたけど、自分でやらないといけない。自主練習にもつながりました」と自立できた。

今や、すっかり只見っ子だ。「コンビニが近くにないのが、ちょっと」と正直に笑うが、見知らぬ人からもよく「頑張って」と声をかけられる。会津若松では考えられなかった。只見の温かさを知った。

帰省は盆と年末年始の2回だけ。JR只見線を使うが、11年の新潟・福島豪雨で一部不通が続く。来年度には復旧工事が終わる。センバツ出場となれば、地域の希望が、また1つ増える。【古川真弥】

◆只見高校 48年、県立南会西部高校伊北分校として開校。幾度かの学科再編を経て、54年に現在地に校舎が建設された。64年に只見高校として独立昇格。全校生徒87人のうち、約30人が町外から「山村教育留学制度」で入学。卒業後、そのまま只見で就職する人もいる。野球部は76年創部。これまでは、08年夏の県16強が最高成績だった。

◆只見町(ただみまち) 福島県南会津郡に属し、日本有数の豪雪地帯。豊かな自然が残されており、東北で唯一のユネスコパークに認定されている。「自然首都」を掲げ、自然体験などの観光に力を入れる。かつては養蚕や塩の生産で栄え、戦後はダム建設でにぎわった。55年をピークに人口が減少。町はUターンや移住を呼び掛けている。