氷都八戸で培った力を卒業後も発揮する。3月の選抜高校野球大会(甲子園)に、21世紀枠で春夏通じて初出場した八戸西(青森)・桐山大空(そら)内野手(3年)が来春、北東北大学野球の青森中央学院大に進学する。具志川商(沖縄)との1回戦では「甲子園初得点」となる2点適時打を放ち、部の歴史に新たな1ページを刻んだ。主将の宮崎一綺内野手(3年)は清和大(千葉)、相前雄一朗内野手(3年)は城西大(埼玉)にそれぞれ進学が決まった。

桐山は小学校入学時から過ごす青森で挑戦を続ける。青森中央学院大は今秋6位で2部との入れ替え戦に勝利し、1部残留を決めた。入学後は「1年生なので先輩たちをしっかり支えることが一番大切。入部するからには1年生から試合に出場して貢献したい」。将来的なタイトル獲得を視野に入れ、心技体に磨きを加えていく。

同校の歴史に刻んだ一打を自信に変える。甲子園では「2番三塁」で出場。6点を追う7回2死満塁で第4打席を迎えた。「チャンスだったので、積極的に振っていこう」と2点右前適時打を放ち「甲子園初得点」をマークした。あの一打から約9カ月。抜けた瞬間は「あまり覚えていない」と笑ったが「コロナ禍で観客があまり入っていなかったが、打ったときの歓声は一番うれしかった」と喜びをかみしめた。

今夏は青森大会準々決勝で敗戦。以降は、同様に卒業後も野球を続ける同期と部活動に参加してきた。バットが金属から木製に変わり「芯も狭まるし打球もあまり飛ばない」と痛感。飛距離のある打球を放てるように、スイングの強化と瞬発系のトレーニングで体のキレを高めている。

4年後の進路は消防士を志望する。小学校高学年ごろに火災現場に遭遇。通報後、迅速に消火活動をしてくれた姿に感銘を受けた。「今まで生活できたのは地域の方々のおかげ。地域に根ざした消防士の仕事をして恩返しをしたい」。有意義な4年間を過ごし、地域貢献を担う人材になる。【相沢孔志】

◆桐山大空(きりやま・そら)2004年(平16)3月21日生まれ、岩手・雫石町出身。小学校入学から青森育ち。小学3年から長者レッドソックスで野球を始め、根城中では八戸東リトルシニアでプレー。八戸西では1年秋からベンチ入り。173センチ、73キロ。右投げ左打ち。家族は両親と弟。好きな野球選手は元広島の前田智徳氏。好物はいちご。

<宮崎は千葉大学野球の清和大進学>

主将を務めた宮崎は、千葉大学野球の清和大に進学する。入学後は野球に取り組みつつ、警察官になる夢の実現を誓った。「人を守る仕事なので、地域の方々の意見を反映しながら行動したい。キャプテンをして培った能力を生かして立派な警察官になりたい」。4年間を無駄にせず、1日を大切に過ごしていく。

苦い思い出を糧にする。「野球人生で1番緊張した」という甲子園は「6番二塁」で出場。だが、4打数無安打2三振。守備でも1失策と悔しい結果に終わった。「攻守でチームの足を引っ張ってしまった。自分のプレーが敗戦につながったので、反省しています」。現在は平日の練習にほぼ毎日参加。木製バットの対応や守備面ではきれいなスローイングを目指し日々奮闘中だ。

同大は今春に1部から2部に降格。今秋は3位で1部との入れ替え戦を逃した。「レギュラーとして試合に出ることが第一の目標。1部に上がって神宮大会にも出場したい」。向上心を忘れずに、レギュラー獲得の道のりを1歩ずつ進む。

◆宮崎一綺(みやざき・かつき)2003年(平15)6月3日生まれ、青森・八戸市出身。小学3年から下長ボルテックスで野球を始め、下長中では軟式野球部に所属。八戸西では1年春に初のベンチ入り。166センチ、62キロ。右投げ右打ち。家族は両親、祖母、兄、姉。好きなプロ野球選手はロッテ西巻。好物はもち。

<相前は首都大学野球の城西大進学>

「1番遊撃」の相前は、首都大学野球の城西大に進学する。「首都リーグはどこの大学も力がある。競い合える環境でやりたかった」。チームは現在、部員が130人を超える大所帯。レギュラー争いも熾烈(しれつ)だが「先輩を敬い、後輩を慈しむという言葉を忘れずに生活したい。大学では悔しい思いをしたくないので、しっかり練習に励みたい」と力を込めた。

甲子園では自身が憧れる巨人坂本と同じ背番号「6」を背負い、グラウンドに立った。だが、打撃では4打数無安打。守備では無失策も、失点につながるプレーをしてしまい「会場の雰囲気にのまれて思うようなプレーができなかった」と悔いを残した。

進学後は経営学を中心に学び、将来的には「自分の会社を立ち上げたい」と夢を膨らませる。チームは現在2部に在籍。1部昇格を果たし、リーグ頂点に立てば、全国舞台で仲間たちと対戦する可能性もある。「対戦するときは、勝ちを譲らず正々堂々と戦いたい」と笑顔で再会を心待ちした。

◆相前雄一朗(そうぜん・ゆういちろう)2004年(平16)1月11日生まれ、青森・八戸市出身。小学3年から明治ドラゴンズで野球を始め、明治中では軟式野球部。八戸西では1年秋からベンチ入り。180センチ、74キロ。右投げ右打ち。好きな野球選手は巨人坂本。好物は馬肉。

<エース福島は日本ハム育成1位指名受ける>

期待を背に、北の大地で雄大に羽ばたく。エース右腕・福島蓮(3年)は、今年のドラフト会議で日本ハムから育成1位指名を受けた。甲子園で福島の後ろを守った同期の3選手が、さらなる飛躍を夢見るエースに向けて思いを語った。

二塁を守った主将の宮崎は「3年間一緒にやってきて蓮のおかげで勝てた試合も多かった。プロでも頑張れとみんなで応援しているので、しっかり1軍で勝利投手になれるように頑張ってほしいなと思います」。

遊撃を守った相前は「(指名は)とてもうれしかったです。プロの世界に行くということは、うれしさと尊敬の気持ちがありました。(福島も)頑張っているので、自分も頑張らないといけないという気持ちになりました」。

三塁を守った桐山は「(指名は)うれしかったです。自分たちの代では蓮が一番の中心選手でした。去年の秋も勝てたのは蓮のおかげ。蓮がいなかったらこういうチームにはならなかったと思います」。

仲間の応援を受けながら、1歩ずつプロの階段を上がっていく。