春夏通じて滋賀県勢初の甲子園優勝を目指した近江は、完敗だった。開幕前にコロナ感染で辞退した京都国際の代替出場校として躍進した春が終わった。

【スコア】選抜高校野球スコア速報>>

準決勝で死球で左足首の打撲を負いながら170球で11回完投した最速148キロでプロ注目のエース右腕、山田陽翔(はると)投手(3年)は「9番投手」で先発。1、2回に1点ずつを失い、さらに3回無死一塁で大阪桐蔭の松尾汐恩(しおん)捕手(3年)に2ランを許した。0-4となったところでマウンド上からベンチに向かってタイムを要求。さらに右手で「交代」のサインを自ら出し、降板を求めた。2回0/3を投げて、3安打4失点(自責3)で、球数は45球。2番手は、左腕の星野世那投手(3年)が登板した。

交代について山田は「これ以上チームに迷惑をかけるわけにはいかなかったので、監督にお願いして下げてもらった。左足は少し痛かったが、マウンドに上がった以上は関係なく投げて抑えたかった。しかし、打たれてしまって申し訳ないと思った」と唇をかみしめた。

山田は試合前までの全4試合を完投。1週間の球数制限(500球)もあり、残りは116球が上限という状況で決勝に挑んだ。さらに前日30日の準決勝・浦和学院(埼玉)戦では左足首に死球を受けた。足をかばいながらマウンドに上がり続け、気迫の投球でサヨナラ勝ちを呼び込み、その姿には多賀章仁監督(62)も「山田には何回も感動させられて…。本当にすごい」と涙していた。

決勝で山田は5試合連続の先発。起用した多賀監督は試合後、「うちは山田のチームだから今日は山田がいけるところまでが勝負だと思って、優勝を狙ってマウンドへ送った。難しい判断だったし、本来は回避するべきだったのかもしれない」と振り返った。

滋賀県勢として初のセンバツ決勝。最後は昨秋の明治神宮大会王者の前に屈した。悲願の日本一はお預け。それでも2度の延長戦を制すなど、代替出場校で快進撃を続けた。試合開始前には一塁側アルプスのみならず、両側の内野席からも温かい拍手が送られ、山田の降板時にも拍手がスタンドに響いた。

準Vに指揮官は「ここまで来られるとは思っていなかった。この結果はチームにとって本当に大きな経験になると思う」と収穫を口にした。さらに「夏は山田を周りがもっとカバーできる強いチームとなって帰ってこないといけない」とチームの底上げを誓った。

山田も最後の夏に向けて「守備のミスから流れを持っていかれたので、もう1度、一から守備を鍛え直してまた夏甲子園に戻ってきて必ず日本一を狙いたい」と力強く締めくくった。