<高校野球兵庫大会:神戸高塚7-2篠山鳳鳴>◇26日◇1回戦◇ウインク球場

高校野球には勝者にも敗者にもドラマがある。日刊スポーツでは今夏、随時連載「BIG LOSER」で敗れし者の隠れたストーリーにスポットをあてる。

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一塁側スタンドには、黒地に「猛進」と書かれた迫力ある横断幕。篠山鳳鳴で毎年、チームでテーマの2字を決め、作成している伝統のものだという。田和桃夏マネジャー(3年)は「みんなすごく元気。元気に突き進んで欲しい」と2字に込めた思いを語った。

横断幕の横には2つの鮮やかな折り鶴が吊されていた。緑色の鶴は保護者によって折られた千羽鶴。青色の鶴はマネジャーによって折られた三千羽鶴。当時3人のマネジャーで、1人あたりのノルマは千羽。5色の紙を使い、各色200枚ずつ折りあげた。横断幕とともに、代々続く伝統の文化だという。

試合前、田和マネジャーは「『勝ってくれよ~』と思いながら折りました」と祈るように話していた。現在3年生のマネジャーは2人在籍。1試合でベンチに入れるのは1人で、この日は長沢茉子マネジャーがベンチ入り。2人がベンチに入るためには少なくとも1勝する必要があった。

スタンドの思いも背負って戦ったが、あと1歩届かなかった。3安打を放った中西健太朗主将(3年)は「後悔はない」と振り返ったが「あるとすれば、マネジャーがひとり(ベンチに)入れなかったことが悔い」と続けた。

「僕が(グラウンドに)来る前にも来て準備してくれていた。僕らは試合する側だけど知らないところで支えてくれていた。ありがたかった」と涙を浮かべながら感謝した。思いを込めた折り鶴は確実に選手の力となっていた。【波部俊之介】