南北北海道の代表校8校が決まった。南北海道・函館地区では函館大柏稜が函館に9回サヨナラ勝ちし、3年ぶり7度目の南大会進出を果たした。0-0の9回表に1点失うも、9回裏1死二塁からエース小野智暉(3年)が左前適時打を放ち同点。さらに2死満塁で西村澪央翔(れおと)中堅手(2年)が決勝の右前適時打を放った。北北海道・旭川地区は、旭川龍谷が3年ぶり35度目の北大会切符を獲得した。

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函館大柏稜が劇的な勝利で円山切符をつかんだ。同点の9回裏2死満塁、この日3打数無安打だった2年生西村に、ベンチからゲキが飛んだ。「お前なら打てる」。先輩たちの激励を受け、1ストライクからの2球目を思い切り振り抜いた。打球がダイブする右翼手のわずか手前に落ちると、両手を挙げ跳びはね、仲間の元へ。もみくちゃにされると「また先輩たちと野球ができる。そのことがなによりうれしい」と喜んだ。

追い詰められても最後まで冷静だった。0-1の9回裏1死一塁。打席にはエース小野がいた。2ボール1ストライクから一塁走者の安宅幸輝左翼手(3年)が二盗を決め1死二塁。小野は「走者一塁だと併殺になる。チャンスができるまで待った。ボールは見えていたし、二塁に走者がいれば決められる自信はあった」。渾身(こんしん)の同点左前適時打を放ち、後輩西村の一打で、サヨナラの生還を果たした。

1年前の屈辱が踏ん張る力になった。昨春代表決定戦は函館工に9回サヨナラ負け。昨年から1番を背負う小野は、1点リードの9回1死から四球で走者を出した後に連打を浴び追いつかれ動揺。さらに四球で崩れ最後は犠打で決勝点を与えた。「ピンチのときこそ焦らないこと。経験から学んだ」。この日9回表2死満塁で与えた押し出し死球は、今夏3戦19イニング目で初の四死球。土壇場で失点を与えても次打者を三振に切り、逆転につなげた。

昨春、函館大有斗元コーチの野村直毅監督(29)が就任し、5季目で初の道大会。自主性を重んじ、小野は「家でもしっかりストレッチやシャドーをするようになった」。今春からユニホームを一新し、英語から漢字で大きく胸に「柏稜」と記したものに変えた。新戦闘服で初の道大会。決勝打の西村は「新しい柏稜を全道や全国にアピールしたい」。19回1失点1四死球と安定感ある小野を軸に、粘りの野球で旋風を起こす。【永野高輔】

▽函館主将の小田瑠人三塁主(3年) みんなで楽しんでやれたのが1番だが、何とか南大会に行きたかった。