伊吹のベンチから一斉に大声が響いた。「絶対、生かすぞ!」「ここで点取らんでどうすんねん!」。
2-2の延長11回。先頭の友田裕作内野手(3年)が執念の右前打を放った。直前の守備で左足がつり、攻撃開始が遅れていた。5分ほど待ってもらっても足は限界だった。走り始めて、すぐに転倒。はいつくばるように一塁に飛び込んだ。担架で運ばれ「すまん」と手を合わせると、伊吹ナインに火がついた。泣いている選手もいた。
思いはつながる。2死一、三塁で5番の中川蒼河(そうが)外野手(3年)は「俺がやったる」。強く振り抜き、左前に転がした。待望の勝ち越し点。さらに適時打2本で計3点。優勝候補の一角、滋賀学園を力強く押し切った。
昨秋、県8強で近江にサヨナラ負けと大善戦し、近畿地区の21世紀枠候補校になった。近畿随一の豪雪地帯。甲子園を夢見て長い冬を耐えたが落選した。それでも、近江の甲子園での躍進などを全員でテレビ観戦。「自力で甲子園に出るぞ」を合言葉に夏に突き進んできた。150球完投の福井希空(のあ)投手(3年)は「気持ちで勝負できた」と胸を張った。春夏通じて初の聖地へ、最高のスタートを切った。【柏原誠】
○…滋賀学園のドラフト候補・鈴木蓮内野手(3年)が初戦で姿を消した。鋭い当たりが正面を突く不運もあったが6回に左翼線に痛烈な一時勝ち越し二塁打。延長11回、最後の攻撃でも左前打でつないだが、5打数2安打1打点で終えた。この日は一、三塁の守備に就いたが、遊撃もこなす。高校通算29発の右の大型スラッガーは「甲子園に出たかったが、やり切った。プロに行ってチームを勝たせる選手になりたい」と顔を上げた。

