今春センバツから高校野球に導入された「継続試合」。今夏の地方大会では、15日時点で27試合で実施されている。

降雨コールドゲーム(9回まで完了していなくても、7回表裏の条件をクリアしていれば試合成立)や、降雨ノーゲーム(7回表裏の条件をクリアしていなければ不成立で再試合)に代わり、翌日以降に中断時点と同じ状況で試合を再開。最後まで行い、勝敗を決する。夏の甲子園でも導入されるが、地方大会での導入は各都道府県高野連の判断に任されている。

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長野大会では12、13日にかけて初の継続試合が実施された。長野日大が、昨夏決勝で敗れた松商学園を、2日がかりで下した。5回終了後に激しい雷雨。継続試合になり、両チームは直後に移動した。

連盟からは試合中につき電話を含めて取材はできないと確認された。確かに、試合中に取材はできない。そうか、まだ試合中なのかと、不思議な気がした。

リードしていた長野日大・松橋将之監督(41)は異例の展開に特別に対応していた。「家族や友達からよくやったと言われ、チャレンジャーの気持ちにスキができるかもしれない。自宅に帰したくなかった」。松代のホテルで合宿態勢を維持した。そして、勝利への意識は、継続試合によって強くなった。「ホテルに入ってもまだ試合は続いているんだと。眠れませんでした。緊張感も継続していたんだと」。

初めて実施した長野高野連の滝沢裕紀専務理事の言葉は明快だった。「良かったと思います。今までなら昨日は(5回終了のため)ノーゲームでした。継続試合ならば投じた球数もカウントできます。幻のホームランなんてなくなるんです。点差によるコールド試合を除き、これで最後まで試合ができる。勝負がつくまで戦える。子どもたちにとっていいことだと思います」

昨夏甲子園大会での大阪桐蔭-東海大菅生は、池と化したグラウンドで戦う姿が思い出される。その不条理さを思う時、一歩先へ踏み出したと映る。同様に導入を決めている山梨高野連の庄司和彦理事長も、緻密にこのルールを考える。「継続試合があるから試合を止めやすくなるかもしれないが、イニング中の際どい場面は、そこだけでも、きっちりやらせてやりたい気持ちはあります」。

1点差の試合終盤の2死満塁、フルカウントなら、雷はともかく降雨、グラウンド不良では即座に決断できるか。ここは運営面の課題になる。

導入する高野連と、しない高野連が混在する。長野(76チーム・全75試合)、山梨(33チーム・全32試合)ともに試合数に対し、予備日(長野11日=休養日、移動日含む、山梨7日)がしっかり確保できている。

まず、やれるところからこのルールを機能させ、多くの都道府県に広まることを願いたい。少なくとも、継続試合での混乱や不利益、不平等は感じなかった。【井上真】

 

○…長野日大-松商学園VTR 12日の試合は天候不順で3時間遅れで開始。先攻の松商学園が初回に1点先制も、長野日大がその裏に4点を奪い逆転。5回終了で6-2とした。翌13日に6回表から再開。6-3で長野日大が勝利した。試合時間は3時間7分も、12日午前11時57分から、13日午前10時53分まで、およそ23時間かかった。

○…千葉大会は学校数が多く日程変更が困難のため、継続試合は導入していない。この日は、船橋芝山-木更津総合ほか7試合が降雨ノーゲームとなり16、17日に再試合となった。また、成田-我孫子は7回が終わり1-1の同点で規定により降雨引き分けで、16日に再試合が行われる。

 

◆継続試合 今春センバツから導入された。硬式では甲子園大会で導入し、春夏秋の地方大会で導入するかは各都道府県高野連の判断(今夏は35大会で実施)。神宮大会、国体は両大会の規定による。

選手の負担軽減の議論の中で、ノーゲームは避けるべきという意見があった。その流れの中、長雨に見舞われた昨夏甲子園で降雨ノーゲームが2試合発生。また、東海大菅生-大阪桐蔭が降雨コールドゲームとなり、選手の心情をおもんぱかり最後までやるべきという声も強まった。日本高野連は議論を進め、今年2月、導入決定に至った。

継続試合は、停止された試合が何回まで進んでいたかに関係なく行う。1回表無死でも、9回裏2死でも、翌日以降に持ち越される。再開にあたっては、カウントも含め停止した場面と同じ状況とする。両チームの出場選手と打撃順も全く同一にしなければならないが、規則で認められる交代は可能とする。停止時点で既に退いている選手は、継続試合には出場できない。

継続試合の前には、確認のためオーダー用紙を交換する。停止時の出場選手を用紙に記載し、それ以外の登録選手は控え選手欄に記載。既に退いている選手は名前の上に二重線を引く。

 

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