兵庫大会準決勝で、神戸国際大付が延長12回の激闘を制し、2年連続の夏の甲子園出場に王手をかけた。先発の楠本晴紀投手(3年)が故障を乗り越え、今大会初登板で11回を14奪三振1失点の力投を見せた。28日の決勝で社と対戦する。

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聖地を知る左腕は延長戦の死闘で1歩も譲らなかった。今夏初登板の楠本が初回から全力投球を見せた。先頭打者を3球で空振り三振に仕留めると、2、3番を5球で料理。立ち上がりを8球で終わらせ、波に乗った。4回に1点を失ったが、延長11回を投げ、14三振を奪った。「みんながここまで頑張ってくれたんで、応えようと思った。気づいたら11回だった」。無我夢中の131球。息詰まる投手戦になったが、チームに安心感を与える投球。12回にスクイズで勝ち越し、夏2連覇に王手をかけた。

待ち焦がれたマウンドだった。「ずっと投げたかったです」。楠本は昨春、昨夏の甲子園で計5試合に登板。しかし大会直前の6月に、左足首の疲労骨折に見舞われた。秋も春もエースナンバーを背負ったが、今夏は背番号10で迎えた。「マウンドに立ったら自分が1番。そこは切り替えた」とはやる気持ちを抑えて、冷静に腕を振った。

負傷期間は、走れないため自転車を使ったトレーニングなどで地道に力を蓄えた。「周りが練習している中、自分は別メニュー。やってやるぞと追い込んできた。投げたいという気持ちがあったからこそ練習にも取り組めた」。この日の登板は当日の朝に伝えられた。青木尚龍監督(57)は「状態を見て、今日決めた」と話す。楠本は「よっしゃ俺か、やってやるぞとなりました」と苦しかったリハビリの成果をぶつけた。ナインの掲げる目標は日本一。頼れる左腕が完全復活を果たし、一気に頂点を狙う。【波部俊之介】