「白河越え」を成し遂げたVナインが、東北の地に凱旋(がいせん)した。第104回全国高校野球選手権で優勝した仙台育英(宮城)が一夜明けた23日、地元に帰郷し、仙台市宮城野区の同校で優勝報告会を行った。移動は陸路で新幹線を乗り継ぎ、午後2時19分頃に「白河の関」付近を通過。JR仙台駅では1000人以上の人々が出迎え、東北勢初優勝を祝福した。

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東北108年目の悲願、甲子園の優勝旗が東北の地に渡った。仙台育英ナインは1時間強の空路ではなく、JR新大阪から4時間以上をかけて陸路で帰郷した。午後2時過ぎ、呪縛のように聞かされた「白河の関」が近づくと、そわそわしながらグーグルマップで何度も確認。ナインを乗せたこまち25号は午後2時19分、福島・新白河駅を通過した。その瞬間、就任5年目で深紅の大優勝旗を持ち帰った須江航監督(39)は、目頭を少し熱くした。

「なにか感慨深いものがありました。新幹線でシュッと駆け抜けていく感じなんですけど、『あ、ここからが東北なんだな』と。僕は埼玉出身ですが東北にいる時間の方が長いので、『歴史が本当に変わったんだ』と思いましたね」

そこから約30分、車窓から初秋の訪れを迎える田園風景をながめながら、JR仙台駅に降り立った。

仙台駅構内では老若男女問わず、1000人以上もの人垣ができた。優勝盾を抱えた佐藤悠斗主将(3年)ら選手18人が、その真ん中を歩いた。須江監督は「野球好きな人だけの白河の関越えではない。多くの県民や東北の人たちの思いや夢があった」と、あらためて胸を熱くした。

宮城野校舎での優勝報告会では、チアリーダー、吹奏楽部、生徒会の生徒たちが集まりナインを祝福した。指揮官は「持っているものを出し切るぞ、と思わせてくれたのは皆さんのおかけ。球場の雰囲気が仙台育英のときは、不思議に何をやってもうまくいった」と、応援への感謝を伝えた。また、大会歌の「栄冠は君に輝く」にも触れ、「“君”っていうのは、すべての東北の人。すべての人に栄冠が輝いたと思っています。多くの人の希望ややる気につながれば」と語り、喜びを分かち合った。

報告会を終えた後も、午後9時まで地元テレビなどの生出演をこなした。歓喜の熱はしばらく冷めそうにないが、9月17日からは県大会も始まる。栃木国体を挟んで、10月10日には東北大会も開幕。高校通算74本塁打の佐々木麟太郎内野手(2年)を擁す花巻東(岩手)、甲子園準決勝で激突した聖光学院(福島)など、今度は近県のライバルたちとわずか2校の一般枠を争う。須江監督は「下級生が多いチームだから、この経験をつないで、何が何でも昨年行けなかったセンバツにたどり着きたい。別の戦いが始まっている。もう、日本一は過去のことですから」。投打の主力7人が残る新チームは、今日24日にもスタート。次は83年の池田(徳島)以来、40年ぶり夏春連覇の大偉業に挑む。【浜本神威】