パドレス・ダルビッシュ有投手(36)の母校・東北(宮城)が、開幕試合で山梨学院に惜敗し、04年以来19年ぶりのセンバツ1勝は届かなかった。1回に金子和志内野手(3年)が塁上で見せたペッパーミル・パフォーマンスを、一塁塁審に注意され、以降は封印。元巨人内野手で同校OBの佐藤洋監督(60)は試合後、高野連について問題を提起した。

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問題となったシーンは試合開始すぐに起きた。1回無死、先頭の金子が遊失で出塁した際、侍ジャパンで大流行しているペッパーミル・パフォーマンスを一塁塁上で見せ、ベンチの選手も盛り上がった。だがイニング終了後、一塁塁審から「パフォーマンスはダメです」と注意を受けたことで、以降は実施せず、試合は2点差で敗れた。

佐藤監督は一件を受け、「なぜ、子どもたちが楽しんでいる野球を大人が止めるのか。日本中が今盛り上がっているのに。もう少し、子どもたちが野球を楽しむ方にいかなければ。高校野球を考えてほしい」。昨年8月の就任後は選手の頭髪で丸刈りを廃止。髪形や服装は自由で、グラウンドや室内練習場では音楽を流して練習するなど、「エンジョイベースボール」を発信してきた。

もちろん、相手への侮辱ではない。開幕前に「楽しむ姿を見せたい」と決意表明した佐藤響主将(3年)は「注意を受けて、少し嫌な雰囲気になった」とチームの思いを代弁したが、「野球にはフェアプレー精神がある。ルールがある以上、自分たちもそれに沿う。違う形で楽しむことができた」と前を向いた。同監督は「ちょっと違う高校野球のスタイルをやっていかないと、野球を選択する子どもたちがいない。私に火の粉が飛んでもいいので、もう少し子どもたちに野球を楽しむということを考えてほしい」と、“変化”を願った。【相沢孔志】

◆ペッパーミル・パフォーマンス 侍ジャパンのヌートバーが、所属するMLBカージナルスで行っているコショウをひくポーズ。「粘り強くやる」などの意味が込められている。WBCでも塁上でパフォーマンスし、ナインを鼓舞。大谷ら他選手にも浸透している。

◆佐藤洋(さとう・ひろし)1962年(昭37)6月9日生まれ、宮城県出身。東北時代はエース中条善伸らと79年春夏、80年春夏の4季連続で甲子園出場。79年春と80年夏は三塁手として甲子園開幕試合を経験した。電電東北(現東北マークス)を経て84年ドラフト4位で巨人入団。プロ通算97試合で118打数30安打(打率2割5分4厘)1本塁打、6打点。94年引退後はNPO法人日本野球研究所を設立し、野球界の底辺拡大に尽力。14年1月に学生野球資格回復の認定を受け、昨年8月に母校の監督に就任した。

○…東北の“無失点男”が聖地で失点した。昨秋公式戦10試合に登板し、30回1/3を無失点の秋本羚冴(りょうご)投手(3年)が5回途中から2番手で救援登板。1点を追う7回1死二、三塁で左犠飛を打たれ、突き放された。「無失点ピッチングを続けてきて気にしながらやっていた。次につながると思ったので今日はいい試合になった」と前を向いた。

▽東北・伊達一也外野手(3年=7回に1点差とする適時打を放つ)「気持ち良くベースを駆け回れた。ベンチだけでなく、観客や応援団もすごく喜んでくれたのでとてもうれしかった」

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