作新学院の磯圭太内野手(3年)は兄2人の甲子園への思いを背負い、投打で躍動。

チーム春夏通算40勝。小針崇宏監督(39)に監督通算20勝目をプレゼントした。

5-2で迎えた7回1死二、三塁。4番手として、遊撃からマウンドに立った。「テンポを意識していつも通り投げれば大丈夫」。だが制球を乱し2連打を浴び2失点。なお暴投と四球で1死満塁。「流れは絶対に渡さない」。次打者を一邪飛。最後は力のある高めの真っすぐで空振り三振に仕留めピンチを切り抜けた。

磯の渾身(こんしん)の三振が、流れを引き寄せた。7回裏には1死二塁から自らのバットで右前打を放ちチャンスを広げると、次打者も続き、4本の安打と右犠飛でこの回、貴重な3点を入れた。

兄2人の思いを背にマウンドに立った。父・貞之さん(51)は現在休部中の日産自動車で投手としてプレー。兄2人は作新学院ОB。長男・一輝さん(22)は夏の甲子園に出場するも初戦敗退。次男・丈嗣さん(20)はコロナ禍で春、夏の甲子園が中止に。小さいころから、父と兄2人の背中を見ながら育った。

「甲子園で勝てなかったアニキと行けなかったアニキ。『頼んだぞ』と言われ、練習にも真剣に取り組むようになりました。アニキたちの倍練習して、アニキたちの分まで活躍するのが目標です」。この冬は食事とトレーニングで体重を20キロ増やしパワーアップし長打力がついた。

憧れの存在は父だ。「小さいころ、祖父の家に行くと、父の現役時代の写真やビデオがたくさんあった。かっこよくて、お父さんのようになりたかった」。幼稚園の卒園式ではクラスメートの前で「僕の夢は父のような選手になることです」と、宣言した。貞之さんは「本人にはかわいそうだけど、プレッシャーをかけていますね。でも優しくておとなしかった圭太が大きくなりました」と息子の成長に優しくほほ笑んだ。

どんなピンチにも、気持ちは負けない。「僕、1人じゃない」。圭太には兄2人の力が宿っている。「1勝できてよかった。家族の分も頑張ります」と力強い。磯家の優しい三男坊は、兄の思いを背に、甲子園で躍動する。【保坂淑子】

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