常葉大菊川(静岡)の春はあまりにも短かった。2回戦で専大松戸(千葉)に0-3で敗れ、10年ぶり5度目の大舞台が初戦で幕を閉じた。エース久保綾哉(2年)が初回に制球を乱し、3失点。2回以降は無失点と力投を続けたが、最後まで打線が援護できなかった。県勢としても、夏を含めて出場6大会連続(20年はコロナ禍で選抜、選手権ともに中止)で初戦敗退。ナインは夏の反撃を誓い、甲子園を去った。

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主将の意地の一打も、流れは変わらなかった。常葉大菊川が3点を追う9回。1死走者なしから平出奏翔内野手(3年)が、内角よりの直球を左前に運んだ。「何とかチームを勢いづけたかった」。バットを通常よりも指2本分短く持って必死につないだが、後続が倒れて試合が終わった。

「初めての甲子園に少し緊張して、ストライクが入らなかった。初回さえなければもっと接戦になって、打線も盛り上がったと思う」。試合後、エース久保が発した言葉がすべてだった。1回。制球が魅力の左腕が乱れた。3連続四死球の後、2点適時打と押し出し四球などで3点を失った。

いきなり追う展開を強いられると、打線も専大松戸の最速151キロ右腕・平野大地(3年)を攻略しきれなかった。平出は「低めのスライダーに手を出してしまった」。変化球主体の組み立てに苦戦。相手の4安打を上回る7安打も、要所での1本が出なかった。

18年夏以来の勝利には届かなかった。それでもチームは5盗塁を記録。冬の成長を示し、久保も2回以降は無失点と力投した。母校を率いて甲子園に初挑戦した石岡諒哉監督(33)は「良い場所だと改めて思った。ここで何とか勝たせて、選手に良い思いをさせてあげたいとさらに強く思った」。久保も「打たせて取るスタイルが通用した。レベルアップして帰って来たい」と話し、平出も「野球が楽しいと思えた場所だった。夏、絶対戻って来ます」と顔を上げた。負けた悔しさ、手応え、そして課題-。ナインは、夏への財産を両手に静岡に戻る。【前田和哉】

■4年ぶり声出し解禁

4年ぶりに声出しが解禁となったアルプス席には、応援団やチアリーダー、吹奏楽部に加えてOBやOGなど1000人を超える関係者が集まった。応援団の古川夢奈団長(3年)は「声を出せることで選手に届けやすくなるので、うれしい。チームの力になれるように(スタンド全体で)一体感を出したかった」と、約10曲の応援歌とメガホンのたたき方をまとめた動画を閲覧できるQRコードを事前に用意するなど工夫。チャンスでは今大会に合わせて用意した新曲「RUN UP 菊高」も初披露した。勝利には届かなかったが、全力応援がナインを後押しした。