広陵(広島)が不発のスラッガー真鍋慧内野手(3年)をカバーする逆転勝ちで8強に駒を進めた。

苦しい展開を打破したのは7番中尾湊外野手(3年)。親戚の元西武監督・森祇晶氏(86)から助言を受けて臨んだ大舞台で、貴重なチャンスメークを連発した。山梨学院と専大松戸(千葉)はともに春夏通じて初の8強に進出した。

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重い空気を切り裂くように、広陵・中尾は三塁まで爆走した。5回1死。中堅の頭上を越えていく三塁打が逆襲の合図となった。高尾の右犠飛で生還して1-2。技巧派左腕をようやくとらえた。「打たされないように、引きつけて打つように意識しました。低い打球を意識した結果です」。背番号7は土で汚れた顔をほころばせた。

2-2の7回には先頭で中前打。勝ち越し劇の起点になった。勝利に導く活躍は、偉大な「親戚」も喜ばせた。元西武監督の森祇晶氏。中尾の祖父と、森氏の夫人の父が兄弟という関係だ。まだ6歳の時、ハワイ・アラモアナ公園でキャッチボールし、かつての名捕手にほめられたのは一生の思い出だ。正月などに会うたび「野球、頑張ってるな」と励まされてきた。

1年春から名門の二塁で先発出場した有望株だが、この1年はベンチ外を味わうなど苦しんだ。そんな時も「いろいろなポジションをやらせてもらえるのは、今後も野球をやる上で必ず役に立つ」と背中を押してもらった。この日の2安打はまだ恩返しの一端に過ぎない。

昨春から甲子園4試合目で初安打。中井哲之監督(60)は「かなり厳しい言葉もかけたけど、やっと意地を見せてくれました。はい上がりましたね。今日、一番うれしかった」と目を細めた。注目の大砲、真鍋が打てなくても全員がカバーして接戦を勝ち切った。「次は3試合目なので緊張せず、チャンスで打ちたい。みんなでつないで勝ちたい」と中尾。V候補が大きな白星を手にした。【柏原誠】

▽元西武監督・森祇晶氏(親戚の広陵中尾が2安打) もう少しでホームランという打球にはびっくりした。甲子園でヒットを打つこと、一つ勝つことは大変なこと。生涯忘れることのない日になっただろう。1戦1戦、地に足をつけてプレーし、チームの勝利に貢献してほしい。

○…2年生エース高尾響投手が2失点完投した。球が走らず2回に2点を先制されたが復調。今大会最多、自己最多の155球で投げきった。「あれ以上点を取られないよう切り替えた。体力には自信があるので、いけるところまでいこうと思った。少し疲れたけど気持ちで投げ切れました」と汗をぬぐった。初戦は二松学舎大付(東京)を8回0封。存在感が際立つ。