最後まであきらめない。1-10と大量リードを許し迎えた6回1死から、作新学院(栃木)・高森風我外野手(3年)は3ボールからの真っすぐをフルスイングすると、打球は高々と上がりレフトスタンドへ飛び込んだ。打った瞬間、それと分かる一打に、すぐに右手拳を大きく掲げた。「調子が悪くてチームに迷惑をかけていて、みんなが頑張ってくれてここまでこられた。本当にみんなにありがとう、と言いたいです」と感謝の気持ちを込めた。

初戦から調子を落とし、2試合で9打数2安打。「軸足が決まらないままに打ちにいっていた」と、右足に力をため下半身を意識して打つフォームに修正。4回、8回にも安打を放ち、チャンスメーク。本塁打を含む4打数3安打1打点と気を吐いた。

諦めない気持ちは、父・圭介さん(45)から学んだ。圭介さんは現役の競輪選手。自宅には父のトレーニング機器がそろい、小さいころから一緒にトレーニングをした。転倒し傷だらけで苦しんでいる父の姿を見ては「お父さんはかっこいいな」と同時に「自分も他のスポーツでプロを目指したい」と憧れた。

小4で野球を始めると、家の周り約300メートルを10周が日課。「自分に限界を作るな」が父の口癖で、毎日休まずに練習して足腰を鍛えた。「どんなにつらい時でも、強い気持ちで最後までやりきれ」大会前、父に言われた言葉だ。どんなに劣勢でもあきらめない。父の言葉が、高森の1本を生んだ。

達成できなかった優勝。高森は「父に、優勝できなくてごめんなさい、と言いたい。でも、夏に向けてチームが勝てるバッティングができるようになります」と、しっかりと前を向いた。諦めない。夏はもう1度この舞台で活躍すると誓い、甲子園をあとにした。【保坂淑子】

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