67年ぶりに地区大会を突破した灘が、5回コールドで初戦敗退した。

灘中の野球部員やOB、保護者らがスタンドを盛り上げる中、選手は立ち上がりからやや浮足立った。

ミスも絡んで2回までに7失点。3回はエース左腕の小山喜弘投手(2年)が3者凡退でしのいだが、4回、5回と追加点を許して10点差をつけられた。

劣勢でも灘ベンチは「いくぞ」「まだまだ」と声を絶やさなかった。見せ場は4回にやってきた。2死から田中壮太郎内野手(3年)が中前にチーム初安打。舩本陽向内野手(3年)が右前打、大石陽翔外野手(3年)も左前打で続いた。鮮やかな3連打で満塁のチャンスを作ったが、ホームには1歩届かなかった。

主将の堀坂俊輔内野手(3年)は悔しそうだった。「この試合に勝つため、直球の強い投手に対応できるように練習をしてきた。冬の間に球際にこだわって取り組んできたが、投手が打ち取った当たりをアウトにできなかった。今日は反省ばかりです。このままでは強いチームとは試合にならない。夏に勝つために一からやっていきます」

全国トップクラスの進学校。今年は東大に63人、京大に28人が現役合格した。野球部にも東大、京大を志望する選手が多数いる。堀池も成績は学年上位で京大医学部志望だ。

野球部の練習は毎日2時間あまり。その後に自習室などで机に向かう。大阪市から1時間20分かけて通う堀池は、パフォーマンスを落とさないために7時間の睡眠を確保している。限られた時間を効率的に使い、野球と勉強を両立させてきた。「みんな『勉強も野球も』と思って短い時間で集中して取り組んでいる。妥協も、言い訳もしません。僕は野球が好きで、楽しいからやっている。野球は部活であり、趣味。勉強のときにはスイッチが入ります」と笑みを浮かべた。

現3年生は入学時から6人減って11人。例年、勉強に専念するために数人が抜ける。3年生1人で臨んだ昨夏は、現メンバーを中心に12年ぶりに夏1勝を挙げた。この1勝が自信になり、春の快挙につなげた。

宮崎秀明監督(45)は「いいかげんな気持ちで野球を続けている子はいません。野球が好きで、熱中しているから、3年生になると取り組みが変わる。僕は何も言いません。今日の経験をまた引き継いでいってほしい」と目を細めた。

チーム初安打を放った4番の田中は「こんなに応援団が来たのは初めてで、びっくりしました。うれしかったけど、もっといい試合をしたかった。高校野球は今しかできないので、どうせなら最後の夏までやりたい。やめたいと思ったことはない。4番を任されているので夏はヒットを打って、打点を稼ぎたいです」と誓った。全国にとどろく進学校の看板を、春に続いて夏もグラウンドで誇示するつもりだ。【柏原誠】