天理の下林勇希主将(3年)が5打点の大爆発で兄との「アベック全国」にはずみをつけた。

0-2の3回無死一塁から左翼越えに同点2ラン。5-2の8回1死満塁では左中間を破る走者一掃の二塁打。続く三島潤也内野手(3年)の左翼線打で7点差とするホームを踏み、コールドを成立させた。

序盤劣勢からの逆転に「焦りはなかった。打線が援護して、コールド勝ちで次の智弁学園戦(決勝)につなげたかった」と笑顔を見せた。

兄の下林源太内野手は天理大3年で、主力として今春の阪神大学野球で優勝。全日本大学選手権への出場を決めた。兄も高校時代は天理で主将だった。顔やプレースタイルも似ていて、比較されることも多い。

兄は新型コロナで甲子園を奪われた世代だ。3年春のセンバツは出場が決まっていたが中止になった。

「兄の代は春季大会もなかった。そんな年もあったんだよということをみんなで理解して、何としてもこの春に優勝したい」。下林にとっては特別な春季大会でもある。

大学は同じ敷地内にありながら普段、兄弟が会えることはほとんどない。帰省の際に「主将はしんどいことの方が多いけど、やり切ったときの達成感があるし、最後は一番いい思いをできる。くじけるなよ」と激励されたという。今月上旬、天理大が優勝を決めた直後にたまたま室内練習場ですれ違い、「(優勝)おめでとう」と伝えると「おまえも頑張れよ」と返された。

下林は昨夏の甲子園でもメンバー入りしたが、控えだった。今夏の甲子園に出場すれば、兄弟とも主力としての全国舞台になり、コロナ禍に泣いた兄の無念も晴らすことになる。「智弁を倒して近畿大会で腕試しをして、夏につなげたい。チーム力で戦って、最後までやりきりたい」。主将らしく、残りの戦いを見据えた。【柏原誠】