<高校野球埼玉大会:花咲徳栄7-6昌平>◇26日◇準決勝◇大宮公園球場

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

   ◇   ◇   ◇

昌平の斎藤陽貴捕手(3年)は「最後の9回の打席で打てなかったのが、本当に自分の技術というか実力で。チームを最後、背負いきれなかったのが後悔しています」と気丈に語った。7回に2点適時三塁打を放つも、2点を追いかける9回無死一、三塁は左飛。絶好機で巡ってきた4番の一打に期待が高まったが、2球目で倒れ、スタンドからため息が漏れた。

春にU18日本代表候補に選出され、実力はお墨付き。今大会も20打数13安打9打点と打ちまくったが、ラッキーボーイ的な出塁も続いた。準々決勝の東農大三戦では最終回に失策で出塁。この日も初回のゴロが先制の適時失策を誘った。

もっとも、幸運を呼んだのは斎藤自身の日頃の行いかもしれない。ある練習日、部室にある80人全員分の靴を1人できれいにそろえ「これで明日も勝てるわ」とつぶやいた。その姿を目撃した部員は「主将として、メンバーかメンバーでないか関係なく、下級生に教えている」と証言する。1年秋から扇の要を任され、積極的に監督にも練習メニューを提案。チームの中心にどっしりと構える頼もしい主将だった。

秋春連覇を成し遂げながら、一番勝ちたかった夏は勝てなかった。「応援してくださった人たちと、メンバー外のみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいです」と頭を下げた。そんな主将を責める人は誰もいない。【佐瀬百合子】