おかやま山陽(岡山)の快進撃が止まった。春夏通じて3度目の甲子園で初勝利。1年前に立てた目標の「甲子園3勝」を見事に果たした。
泣きじゃくる選手を横目に堤尚彦監督(52)は穏やかな表情だった。「本当に幸せな時間を過ごさせてもらった。見えそうで見えなかった、妄想ではない世界には入れた。ここまで連れてきてくれてありがとうと選手たちに言いたいです」と感慨深げだった。
青年海外協力隊員としてアフリカやインドネシアで野球普及に携わり、ジンバブエ代表監督として東京五輪アフリカ大陸予選を戦った経験も持つ。「世界に野球が普及しないと日本の野球は滅びていく」と危機感を抱き、「野球もサッカーのW杯のように発展してほしい」と夢を描く。
甲子園優勝を目標に置く。名誉などではなく、野球普及や教育のための手段の1つと考える。グラブなど使い古した野球道具をJICA(国際協力機構)を通じて発展途上国に寄付する活動も13年目に入った。「1秒でも長く甲子園に滞在することで、報道の皆さんに取り組みを伝えてもらえる」と話してきた。
選手に広い視野と目標を持たせ、そのための努力を積み重ねることを教育方針の軸に置いている。
「夢を妄想で終わらせず、そこに行くためにはどうしたらいいか考えるようになってほしい。今の3年生はもともと強くなかったけど、新チームになった時に甲子園3勝と目標を決めて、それをクリアした。本当に行けるのかなと思っていた選手もいたと思うが、細かい数値目標を1つずつクリアして、試合と失敗を繰り返して成長してきた」。 自身の哲学に基づいて高校野球の舞台で存在感を高め、この夏、ようやく1つの形になった。
簡単な作業ではない。チーム作りの難しさについてはこう表現した。「おでんと一緒。じっくり染みこませないといけない」。特異なキャリアを歩んできたその顔には、充実感もにじんでいた。【柏原誠】

