慶応(神奈川)が103年ぶりに決勝進出。21日の決勝では107年ぶりの頂点をかけて、仙台育英(宮城)と戦う。

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ここまでの慶応は準々決勝の沖縄尚学戦も、3回戦の広陵戦も、打力で一気呵成(かせい)に畳みかけました。準決勝もどんなバッティングか注目していましたが、土浦日大の藤本君は冷静なピッチングでした。

変化球の制球もよく、打ちづらいのだろうと。となると1点をどう取るか。慶応の真価が問われる試合になりました。

2回に先制してから追加点が奪えません。得点圏に進めてから苦しみます。5回はスクイズ失敗(ファウル)。続く6回も1死三塁から8番大村君にカウント1-1からスクイズ。これもファウルになります。

しかし、ここで大村君のその後が光りました。カウント2-2から3球続けて、外寄りのボールを逆方向へファウルで粘ります。簡単に終わらない。何とかスクイズ失敗のミスを取り返そう。強い意志を感じました。

8球目、やや甘く入った変化球を右前に運びました。もぎ取った1点です。私は神奈川の準決勝、東海大相模戦を見ていたので、あの打力から思い切り振る打線のイメージが強かったのですが、状況に応じてただ振るだけじゃないんだと。大したもんです。

この回、2死一塁で打者丸田君の打席で大村君を走らせます。たとえ刺されても次の回は1番から。結果は見逃し三振も、こういう判断に森林監督の勢いを大切にする采配を感じました。

一方の小菅監督にも徹底した攻め方を見ました。3回無死一塁で8番大井君に打たせます。ここでは2通りの考え方があります。大井君にバントで1死二塁の形をつくること、もしくは9番投手よりも打つ確率が高い可能性にかけて思い切って打たせる。

小菅監督のはっきりした戦い方は、これまで通りの采配に感じました。この大勝負でも普段通りにやり切る土浦日大の迷いの無さは、慶応ベンチからは不気味に見えたと思います。

慶応は3度スクイズを試みてファウル2回、飛球での併殺1回とすべて失敗に終わりました。スクイズだけに特化すれば、決勝で戦う仙台育英の確実性の方が上回っています。

しかし、慶応にも流れは来ています。5回無死一、二塁。一塁走者丸田君は、八木君の送りバントでスタートを切る直前、アルプスの演奏に合わせて太ももをたたいていました。一塁側アルプスの声援を背に、そんな余裕があるのかと、私は驚きました。

どんな瞬間でも成長する甲子園球児のたくましさ、ずぶとさと言えます。決勝戦、本当に楽しみです。(日刊スポーツ評論家)