夏の甲子園大会は慶応(神奈川)の107年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。熱戦続きで日本列島を熱狂させた大会を、3月に日大三(西東京)の監督を退任して7月に日刊スポーツ評論家に就任した小倉全由氏(66)が企画「深掘り」で総括。選手のガッツポーズについての見解やリプレー検証の是非まで、甲子園を2度制した名将が、未来の高校野球界を思って提言した。

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教員を定年退職して初めての夏の甲子園でした。本当にフラットな気持ちで観戦させてもらいました。その中で、選手がかなりの頻度でボールから目を切っていたのは意外でした。

象徴的な場面が17日の仙台育英(宮城)-履正社(大阪)でありました。3回裏1死二塁、仙台育英の三塁手が一塁へ悪送球。一塁手は転がるボールへの反応が遅れます。この時、二塁走者は恐らくボールから目を切っていたと思います。

仮に本塁を狙っても結果はわかりません。しかし、ボールデッドになるまで見続ける大切さは、指導者、選手に伝えたいと思います。

これに関連して、ガッツポーズも気になりました。甲子園での初ヒットに、ベンチに「やったぞ」と伝えたいのはわかります。それでも、野手が打球をどう処理したか、中継位置、送球の高投を見届けてからでも遅くありません。これは大切です。

かくいう私も昨夏の西東京大会決勝で、2ランを放った村上(太一外野手、現武蔵大)がベンチへ両手を上げてガッツポーズ。私は大声で「走れっ」と叫んでいました。結果、打者の感触通りの本塁打ですが、それでも、スタンドに入るまでは打球から目を離すな、ということです。

敗れましたが、仙台育英の選手層の厚さ、技量の高さは、前年王者にふさわしいものでした。試合後、インタビューを拍手をしながら聞く態度が称賛されています。私はずっと泣きながら立ち尽くす橋本君の姿に胸を打たれました。

マナー良くスマートには、私が日大三で選手にずっと伝えてきたことです。整列し、勝者に敬意を払う姿は素晴らしいです。

ただ、橋本君のあの悔し涙にこそ、私は心からねぎらいの拍手を送りたい。あの涙が彼を大きく成長させてくれると信じたいです。

最後に、今夏も審判のジャッジに多くの反応がありました。ここからは私が常々感じていたことです。

しっかり議論し、準備が整えば、いずれはリプレー検証導入も視野に入れるべきと感じています。

私は高野連の技術・振興委員を務めています。機会があれば、この私見は議論の場で申し上げたいと考えています。そしてその意図は正確なジャッジの実現と、思い切って判定できる環境整備に要約できます。そして環境整備とは以下の趣旨です。

高校野球の審判は多くの部分でボランティア精神によっています。ですが、自発的に務めてくれる部分を美談だけで済ませては、負担軽減にはなりません。ベストな位置でジャッジできなかった時、本当に微妙な時、リプレー検証で補完すれば、選手も納得します。何より審判がそれ以上のストレスから解放されます。

話し合い、よりよい方向を目指す。タイブレーク、継続試合、球数制限、申告故意四球、休養日導入はここ数年で改革され、選手、ファンの皆さんにもなじみつつあります。酷暑対策とともに判定への批判も創意工夫で改善できるはずです。

特定のジャッジが原因で、審判が2度とグラウンドに立てないことを誰も望みません。よくファンの方、選手、監督から聞く言葉です。「ひとつのジャッジで選手の人生は変わる」。

それは審判にも当てはまります。熱意ある審判なくして、高校野球はあり得ないからです。