【台北(台湾)10日=柏原誠、保坂恭子】高校ジャパンが初めて世界の頂点に立った。V候補筆頭の地元台湾に対し、1点を追う4回にバント3連発で2点を奪って逆転。前田悠伍投手(3年=大阪桐蔭)がリードを守って投げきった。パワー野球全盛の時代に、全員で1点をもぎ取り、守り勝つという日本の高校野球の神髄を世界に見せつけた。名将・馬淵史郎監督(67=明徳義塾監督)は万感の思いで台北の夜空に舞った。

  ◇  ◇  ◇

馬淵監督は、めがねを取って涙をふきながら選手たちに駆け寄った。「感無量ですね。過去の先輩たちが取れなかったのを、なんとか自分たちの代で取ろうやないかと合言葉に言ってきた。本当に良かったです」。喜びをかみしめた。

1点を追う4回、3者連続バントで逆転。にやりと笑みがこぼれた。先頭の緒方が四球を選ぶと一気に仕掛けた。4番武田は犠打で1死二塁。続く丸田は、自らの判断で初球セーフティーバント。一塁の判定はアウトだったが、リプレー検証で覆った。1死一、三塁となり、高中がスクイズ。三塁手の悪送球で、2人が一気に生還。つなぐ野球で2点をもぎ取り、監督はベンチで手をたたいた。

試合前、気合を入れた。全員で円陣をつくり、約2分間、監督の熱い思いを伝えた。「今まで4回、決勝にきて、全部銀メダルや。お前らの代で金メダルを勝ち取るくらいの気持ちでいけ」。

適性をいかす野球を貫いた。国内合宿から、選手との距離をぐっと縮めた。オープン戦前、選手の「暑い」という声と大量の汗を見て、財布からお金を出してスタッフへ渡した。「領収書はいらんけぇ」と全員にアイス40個、自腹で購入。 長距離打者は選ばず、俊足強肩や守備に定評のある選手を招集。「そういう選手を選んだ。結果的にいい結果が出て本当に良かったと思います」。「最高の仲間」と表現するチームと、日本の野球の神髄を見せた。【保坂恭子】

▼日本がU18W杯(旧AAA世界選手権)で初優勝した。これまでは大学生で編成した82年に準優勝、沖縄県高校選抜で臨んだ99年に5位。高校日本代表で臨んだ04~22年の出場7大会でも3度の準優勝が最高成績だった。

▽全日本野球協会(BFJ)山中会長「祝福と感謝の気持ちを伝えたい。東京五輪、WBCのいい流れをさらに増幅させてくれる、意味のある世界一。金字塔で、大変な快挙だ。野球界として喜ばしい」