高校通算140本塁打を誇る佐々木麟太郎内野手(18=花巻東)が入学する米国の超名門、スタンフォード大学。その体操部で31年間監督、コーチを務めた日本人がいる。浜田貞雄さん(77)。72年から指導を始め、全米制覇、96年アトランタ五輪では教え子を金メダルに導いた。一般的に、米大学は入学しやすく卒業が難しいとされる。だが、浜田氏は「入ることが最難関の大学です」と説く。

スタンフォード大には、厳格な入学基準がある。毎年5万5000人ほどが願書を提出し、合格者は2000人ほど。「高校の成績がトップクラスの生徒ばかり。そこでの差はつきにくく、学力以外の面が重視される」と振り返る。

過去には親交があったゴルフ選手の入学を担当局に掛け合ったが、願書すら受け付けてもらえなかったという。「まず学力でレベルに達してないので、在学時に苦労する。『不合格』とするのもかわいそうだ」と返答された。「その前提の上で、ビジョンを求められます」。1つが作文。スポーツだけではない人生の目標が問われる。

狭き門を通過するのは全学部生で8000人ほど。決してマンモス校ではない。敷地は東京の杉並区に匹敵する約33 km2。ゴルフ場、ショッピングセンター、牧場なども含む中に、野球部の施設もある。奨学金の上限は各競技部ごとにNCAA(全米大学体育協会)で定められ、野球部で概算すると、4年間で約5000万円の学費など全額が奨学金で進学する選手は1学年に1、2人。佐々木は狭き門の、さらに少ない有望者に名を連ねる。

入学後はNCAAが定める年間の単位取得数に達せなければ試合に出られない。ただし、同大の野球部生の卒業率は現在は100%で、同氏は「大学が派遣する家庭教師もいます。アスリート学生は遠征先にも荷物を教科書で埋めて、空港での移動待ちなどで勉強しています」と理由を述べる。「何より、将来へ学ぶのが当たり前。遠征先での試験などもありますが、決してカンニングなどはない。自分のためにならないですからね」と語る。

浜田氏の教え子は実業家や宇宙飛行士など多様だ。各自がスポーツだけでない未来のために、学生生活を送る。「麟太郎さんも、周囲の仲間からの大きな刺激を受けるでしょう。最高の環境で経験した事を日本にも伝えてほしいですね。成功を願っています」とエールを送った。【阿部健吾】