キャプテンが泣いた。今春センバツで優勝した健大高崎(群馬)が前橋商との決勝を5-1で制し、甲子園春夏連覇の権利を得た。意外にも、夏の甲子園出場は15年以来9年ぶり。なぜ夏に勝てないのか-。歓喜の裏で、プロ注目捕手の箱山遥人主将(3年)が呪縛を破るべく、涙の直談判に乗り出していた。

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空振りを奪ったツーシームを捕ると箱山は両手で土をたたき、その場に突っ伏した。「倒れるくらい野球をやろうと言ってきて、最後の1球までやり切って」。ほんの少し1人の時間に浸り、歓喜の輪へよろよろと向かった。泣いていた。

4番打者なのに初回、先制機にセーフティースクイズを青柳博文監督(52)に進言するほど、この試合に懸けていた。「能力ある選手が多いからこそ犠牲心をもってやろう」という精神を自ら体現した。チームは久しく夏の甲子園から遠ざかっている。原因を求め、仮説に行き着いた。

「ベンチメンバーと、ベンチに入れない3年生の温度差が出て、その雰囲気のまま夏に入るのが良くないんじゃないかなと」

生方啓介部長(43)、青柳監督に直談判した。熱い思いで、自然と涙も出た。

「指導者の方々が夏に行けないのを一番悩んでると思いますし、何が正解か分からないんじゃないかと思って。自分たちが(3年生全員のフルメニュー参加を)提案して夏に甲子園に行くことで、それを正解にして、指導者を助けたい。本当に親身に接してくださってきたので」

3年生28人全員でノックに入った。球数は少なくとも、全員で打った。遠征も全員で。「みんなの目の色が本当に変わって」。今夏も大会中に紅白戦を行った。皆で戦う。森山竜之輔内野手(3年)の帽子つば裏にはベンチ外メンバー全員の名が。期待される春夏連覇は、手段でしかない。目的は。「最後は泣くと思います。22期の仲間と健大のユニホームで2度と野球ができなくなるのがつらいので。だからせめて1日でも長く、最後までみんなでユニホームを着たい」。別れの場が甲子園になった。【金子真仁】

◆健大高崎 1968年(昭43)創立の私立校。01年に共学となり、現校名に。生徒数は1273人(うち女子は805人)。野球部は01年に創部し、甲子園は春夏計10度出場。今春のセンバツで優勝。主な卒業生は阪神長坂拳弥、西武柘植世那など。所在地は高崎市中大類町531。加藤陽彦校長。

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