茨城・常磐大高の野球部監督(30)がイタリア・フィレンツェの世界遺産「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」に落書きをした問題で、同校は6月30日、監督を29日付で解任したと発表した。同校によると、本人は名前を書くと幸せになるという話を聞き「深く考えずに書いた」と事実を認めている。浅岡広一校長は「心ない行為。たいへん申し訳ない」と謝罪した。野球部は昨夏の茨城県大会で準優勝し、今夏もシード校。夏の大会の出場については県高野連を通して、日本高野連の判断を仰ぐ。

 水戸市の常磐大高で正午から行われた会見で、浅岡校長は「世界遺産という重要な文化遺産に落書きをしたのは大きなこと。指導にあたるという立場を考えると戒めなければならなかった」と解任の理由を述べた。監督は同席しなかった。

 監督は05年12月に結婚し、06年1月2日から7日までイタリアの史跡を回る団体ツアーを利用した旅行をした。学校側によると、5日に訪れた大聖堂の近くで「これで名前を書くと幸せになる」と日本語を話す日本人のような風ぼうをした男から言われ、油性ペンを購入。展望台にある柱に自分と妻の名前を書いた。「深く考えずにそういう行為をしてしまった」と沈痛な表情で説明したという。

 午後3時からは茨城県高野連と浅岡校長の会見が行われた。大竹喜士郎県高野連会長は「高野連として正式な文書を学校側から提出してもらい、日本高野連に提出し判断を仰ぐ」と話した。「個人的には監督のプライベートなことなので、野球部を県大会に出場させてやりたい」と述べた。茨城県大会は5日開幕で、同校は12日に試合の予定がある。生徒の心情を考え、出場できる方向で日本高野連にお願いするとした。

 監督は00年4月に非常勤職員として採用され、同時に野球部のコーチに就任。01年4月から監督として采配を振るい、昨夏は県大会で準V。昨年のドラフトで楽天に4位指名された菊地保則投手を育てるなど、若手有望監督といわれていた。今年4月からは常勤職員となり事務職を担当。社会科の教員免許を持っているが、教壇に立ったことはない。監督は解任するが、職員としての処分に関しては検討中とした。

 また、浅岡校長は、監督について落書きの事実が発覚した25日から無期限謹慎処分としてグラウンドに入ることを禁止していたと説明したが、28日に行われた県外の高校との遠征試合では、監督が指揮を執っていたことがわかった。

 浅岡校長は自分が要請したことを認め、「直前のキャンセルは相手校に申し訳なく、ほかに代わりをできる人物がいなかった」などと話した。