駒大苫小牧(北海道)が再建へ“切り札”を投入する。同校は04年夏の甲子園で北海道勢初優勝に輝いたときの主将で、今春からコーチとして着任していた佐々木孝介氏(22)を1日付で新監督に就任させると7月31日、発表した。同校で行われた会見で佐々木新監督は全国制覇、そして香田誉士史元監督(38=現鶴見大コーチ)超えを宣言。秋季大会に向け、新チームに「NO・1イズム」を注入する。勇退する茂木雄介前監督(28)は統括顧問として3年生の進路指導などを担当する。

 突然の抜てきにも迷いはなかった。小玉章紀校長(60)から野球部の人事が発表されたのは前日30日午後4時。駒大を今年卒業したばかりの22歳の若者にとっては大役だった。「重圧はあった」が「腹を決めて、やるしかない」と決断した。会見まで情報が漏れないよう、日本一メンバーや恩師の香田元監督、両親にも一切、話さなかった。1人で偉大なる伝統を背負うと決めた。

 会見では終始、言葉を選びながらも真っすぐ前を見つめながら話した。目標は全国制覇と恩師を越えることだ。ただし、こう付け加えた。「香田先生を越えたいというより、それ以上に選手を勝たせたい。生徒にとっては戻ってこない貴重な3年間。悔いを残してもらいたくない。それだけです」と、飛び出してしまいそうな情熱をしまいこみながら話した。

 佐々木新監督が主将だった04年、そして翌夏に甲子園で連覇し、田中将大(20=楽天)を要した06年は再試合で準優勝と校名を全国区に押し上げた。しかし昨夏、この夏と2年連続南北海道大会でコールド負けと常勝チームに陰りが見え始めた。今季は新入部員9人と減少傾向がみられたことも「プリンス」の投入に拍車をかけた。佐々木宣昭教頭(58)は「香田先生の野球の後継者として期待している」と抜てきの理由を説明した。

 監督就任の前日となるこの日の練習前、選手たちにあいさつした。「今年の夏、悔しい思いをした。3年生、茂木先生の思いをくんで、やっていこうじゃないか」と鼓舞した。髪を短く刈り上げた姿は選手たちと見分けがつかないほどはつらつとしている。若さを弱点ではなく、武器に変える。初采配(さいはい)は1日の札幌琴似工、帯広北との練習試合。「若さを出していきたい。選手から僕も元気をもらっているし、会話を大事にやっていきたい」。日本一の主将は日本一の指揮官になるために1歩を踏み出した。【上野耕太郎】

 ◆佐々木孝介(ささき・こうすけ)1987年(昭62)1月10日、北海道余市町生まれ。駒大苫小牧高では1年秋から内野のレギュラーで2年春、夏と甲子園出場。3年時は主将として、夏の甲子園で北海道勢初優勝を飾った。駒大進学後は3年時から学生コーチに転身。指導者への道を歩み始め、今春の母校赴任となった。