<高校野球神奈川大会:慶応3-2百合丘>◇19日◇3回戦

 高校通算76本塁打の慶応・谷田(やだ)成吾外野手(3年)が新たな“守備キャラ”を開拓した。台風接近に伴う雨でグラウンドコンディションは最悪。1つのミスが大量失点につながる、1点リードの5回2死一、二塁だった。ポール際の深い右飛を追いかけて飛び付き、ファウルゾーンのフェンスに大激突。笑顔でベンチに戻ってくる左手には、しっかり打球が収まっていた。

 上田誠監督(53)が「あんなの初めて見た」という好捕はそこだけじゃない。4回はライナー性の打球を前方にダイビングキャッチ。5回には、捕手が落とさなければ補殺が成立した、好返球も見せた。

 谷田は「今日は打つ方の力を守備に回したんじゃないですかね」と照れ笑いだ。代名詞の打撃でも先制の2点適時三塁打も放ったが、2三振で加点できなかったことが「76発男」には不満らしい。慶応野球部には「雨、風、延長、決勝には負けるな」という部訓がある。開始時間が2時間半遅れ、9回裏には豪雨で8分間中断したが、主将として攻守にわたり貢献した。

 今夏は、東東京の優勝候補、帝京に通う弟泰生投手(2年)も公式戦デビュー。時間が合えば一緒に近所のバッティングセンターに行く仲良し兄弟で「甲子園で対戦できたらいいですね」と夢は膨らむばかりだ。春の神奈川を制したディフェンディングチャンピオンとして、まだまだ立ち止まるわけにはいかない。【鎌田良美】