<高校野球広島大会:広島工8-5広島市工>◇23日◇4回戦◇マツダスタジアム

 広島工8強入り-。広島市工に2度も追いつかれる接戦を制し、8強入りを決めた。7回2死二、三塁から4番白川雄大外野手(3年)が右中間へ決勝の2点適時二塁打を放った。その後、1点差に迫られた9回も大山流聖外野手(3年)の2点適時二塁打。競り勝った広島工が、夏連覇へ前進した。

 緊張から解かれた広島工ナインは、笑顔で今大会3度目の校歌を歌った。序盤で3点をリードしながら追いつかれ、シーソーゲームの様相を呈した。広島市工とは練習試合を繰り返し、選手同士も顔なじみになるほど、手の内を知り尽くした間柄だ。沖元茂雄監督(48)は、相手ベンチの平田顕久監督(52)の表情を見て戦々恐々としていた。

 「ベンチでニコニコしていて。ひっくり返されたら、一気にいかれるだろうなと、ちょっと怖かった」

 終わってみれば、1度のリードも許さず、12安打8得点と打線が奮起した。

 スターはいない。甲子園に出場した昨夏は、エース辻駒、4番宇佐美(現日本ハム)と投打に軸があった。沖元監督は今年のチームを「去年みたいな爆発的な力があるわけではない。飛び抜けた選手もいないし、みんなで戦う公立らしいチーム」と評する。だが、143人全員が同じ方を向いている。冬には1000本の連続ティーを1日のノルマとし、練習中に卵かけご飯を食べ、肉体改造を図った。2、3年生の体重は平均で5キロ増加した。

 たゆまぬ努力が実となり、戦いを重ねてチームの骨格が見えてきた。甲子園経験者の重森大河内野手(3年)は、21日の総合技術戦で熱中症になり37・9度まで体温が上昇しドクターストップがかかりかけた。だが、中1日で回復すると、この日は4打数3安打の固め打ち。同点の7回2死二、三塁からは、今大会不振にあえいでいた4番白川が、右中間へ決勝の2点適時二塁打を放った。

 その一方、陰で大きな力を発揮する選手もいる。7回1死一、三塁のピンチに、伝令でマウンドに走ったのは背番号20の丸山勇輝(3年)。突然、内野陣の頭を1人ずつなでていった。「魂を送りました」。効果があったのか、後続2人を外野フライで打ち取り最大のピンチを脱した。丸山は背番号19の高瀬侑(3年)とともに、メンタルトレーニングのリーダーも務めるムードメーカー。野球の技術「以外」でも大きな戦力。大所帯ながら、1人1人が求められる仕事をまっとうする。悲願の2年連続の甲子園まで、あと3つだ。【鎌田真一郎】